戸惑い━yoshika━
夜の街には色とりどりのネオンが光り輝いて、良佳の目をチカチカさせる。
行き交う人々も皆華やかで、賑やかで、この景色にとても馴染んでいた。
「俺、彼女いるからね」
彼は人の行き交う交差点を歩きながら、軽い調子でそう笑う。その言葉の意味が理解できずに良佳は目を丸くして彼を見つめた。良佳の視線に気づいて、彼は「ああっ」と納得したように頷くと人波に押されて、少し遅れて歩く良佳に手を差し出してくれる。良佳は差しだされたその手を素直に受け入れると、指先が触れた事を確認して彼は良佳を軽く引き寄せた。
「安全ってこと」
彼が優しく耳打ちしてくれる。その言葉の意味にようやく気がついて、良佳は目を瞬く。彼は気を遣ってくれたのだろう。良佳の肩に力が入っていた事に気が付いていたのだ。
その気遣いが嬉しくて良佳の顔は少しだけ綻ぶ。
「やっと笑ったね」
顔を上げると横を歩く彼と目があう。良佳よりも数センチ高いだけの彼が、良佳の顔を見て微笑んでくれていた。男の人とこんなに近くで話すのは初めてで、良佳は自分の顔が・・・耳までもが熱くなっていく感覚を知る。そんな気恥かしさで不意に下を向いてしまう。
頭上で彼が微かに笑う気配がした。バカにしたような笑いじゃなくて、優しい笑い方。
「俺は『コウ』、ね。キミは?」
彼が明るく言う。良佳は赤い顔のまま視線を逸らして自分の名前を小さく呟いた。『ヨシカ』と。
それからの時間はあっという間だった。
ウィンドウショッピングに、ゲーセン、疲れたらスタバで軽く一息。
何もかもが初めての経験で、良佳は目まぐるしく流れるネオンと音、そして自分の気持ちの変化に戸惑う。こんなに楽しいと思ったのは初めてだった。
(こんなの・・・知らない)
楽しくて、時間も忘れて騒いで・・・・でも、その分良い知れない不安も心の奥に生れて行く。
どうすればいいのか分からない。その気持ちが、良佳の心を埋めて行く。
「そろそろ帰ろっか」
コウにそう声をかけられて、良佳は駅前の時計を見る。時計は9時を軽く回り、もうすぐ10時になろうとしていた。
「もう、こんな時間・・・」
良佳は自分の言った言葉に驚いて、目を見開く。今まで時間が過ぎるのを「遅い」と感じた事はあっても「早い」と感じた事は無かった。「もう」なんて言葉は使った事すら無いに等しい。それなのに・・・。
「・・楽しかった?」
コウは困惑する良佳の顔を覗き込んで微笑む。その眼にはやはり「優しさ」が浮かび、彼がどれほど気にかけてくれていたのかを改めて知らされる。
「・・・うん」
良佳は素直に頷いていた。楽しくて、時間も忘れて・・・そして彼の優しさに触れる事が出来て「心」が暖かくなった。そう思える。
「ありがと」
だから良佳は微笑んで、感謝の意をコウに向けた。
「・・いいって、付き合って貰ったの俺だし」
彼は少し照れくさそうに頭を掻くと、今度は「一人で平気?」と良佳に尋ねる。
良佳は小さく頷き、「そっちは」と逆にコウの帰りを気遣った。
「俺・・・・俺は~。どうだろ(笑)」
「え!?・・ダメなの?」
「・・・う~ん」
コウは出会った頃と変わらない人懐っこさで冗談めくと、唐突に良佳の手を掴んで何かをその手に押しつけてきた。
「な、何!?」
「俺の、アド」
言うなり良佳の手を握らせ、パッと離れて行く。人ごみの中、彼の振る手だけが見える。だんだんその手は遠くなって、やがて見えなくなる・・・。
良佳は彼の気配が完全にいなくなるまで、その場を動けずにいた。
右の掌には白いメモの切れ端が握られ、後には細やかな「温もり」だけが残っていた・・・。
良佳の夜遊び(笑)でした。
何というか・・・・う~ん(・_・;)
段々書き方がよく分からなくなって来ました(゜-゜)
どうなんでしょう??
それでも、まだまだ続きます(@_@;)