夜━yoshika━
『夜が来る。
また陽は眠り、
月が闇を引き連れ
訪れる。
そうして全ては
静寂に包まれ、
無からまた、
「再生」へと向かうのだろう。
私の心にも、
静寂が訪れて、
無から「有」へと変われば良い。
そうすれば、
明日も、明後日も、
また歩き続ける事が
出来るから。 』
冷たい海風を浴びて、月が暗闇から顔を出した。
良佳はようやく重い腰をあげ、その場に立ち上がる。
「うわっと・・と・・?」
冷え切った体は上手くいう事をきかず、膝がカクンッと折れ足には違和感が残り、髪の毛も潮風を浴びて軋んだ音をたてた。良佳は小さく苦笑いをすると、一つ大きく伸びをしてすっかり暗くなった砂浜を歩きだす。
辺りに人はいない。聞こえるのは波の・・・寄せては返すその音だけ。
重い足取りで、冷たい体を支えながら歩く。ココに来て、心は軽くなった気がする。
少なくとも、この謹慎の間は鬱々とした気分で過ごさなくても良さそうだ。
(良かった・・・・何か・・・大丈夫だ)
そう思って、初めて自分の心が悲鳴を上げていた事を知った。心は限界だったのかも知れない。
イジメ、裏切り、そして・・・強姦。未遂で終わったけど、それは運が良かっただけかも知れないし、それを「良かった」と表現するのは可笑しいとさえ思う。
江ノ電のホームに辿り着き、良佳はまた同じ道を帰る。それで今日の冒険は終わり。そう思った。
そこで不意に隣の席の男に声をかけられなければ。
「キミ、何処行くの?」
「え・・?」
突然の事に良佳は自分に話しかけられているとは気づけず、けれども彼は良佳の顔を覗き込んでニコニコと微笑んでいる。周囲に他に人はいない。どうやら彼は自分に話しかけているらしかった。
「いや・・・あの、何処って訳じゃ」
「じゃあ、ちょっと遊ばない?」
見た目はちょっと軽そうな、でも「不良」って感じじゃなくて・・・どちらかというと「ノリ」の良い人懐っこい感じの男性。彼は、良佳が微かに警戒しているのを見てとったのか、少し苦笑いをしながら足を組んでふと天井を見上げた。
「実はさ・・・待ち合わせしてた奴が急に来れなくなって、俺今一人なの」
良佳の反応を見るでもなく、彼は続ける。
「ホントは真っ直ぐ帰ればいいんだけど、この時間はさ、家に居たくないんだよ」
彼は明るい調子で「俺、拾われっ子だから」などど冗談めいた事を言って笑う。良佳は、彼の言葉に真剣に耳を傾ける。自分も・・・家には居たくなかった。居場所がなくて、息苦しくて・・・。
だから、彼の気持ちが何となく分かってしまう。本当なら初対面の知らない男について行くなんて有り得ないと思う。良佳はこれまで男性と付き合った事もなければ、ナンパされた事もない。男がどんなモノか知らない。でも、彼の気持ちは同じ「人」として分かってしまった。だから・・・。
「いいよ・・・」
良佳は小さく同意の相槌を打つ。彼はきょとんとした顔で良佳を見ていた。
「いいよ・・・行こう」
もう一度頷いて見せると、彼は先程よりもにっこり笑って「マジ、さんきゅ」と短く言葉を返してくれる。初めて、「気持ち」が誰かと通じあえた気がした。
それが何より嬉しくて、二人は電車を乗り継いで夜の街に消えて行った・・・。
良佳は一体何処へ行くのやら・・・(@_@;)
つらつらと書き進めております。
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