表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/113

海━yoshika━


海が見たい。

電車に乗って、そう思った。

目的がある訳じゃなく、ただ「冬の海」が見たいと思ったのだ。


良佳は電車を乗り継ぎ、江の島海岸を目指す。

湘南新宿ラインを利用し、鎌倉からは「江ノ電」を使って移動する。電車は嫌いじゃない。

晴れた日の暖かな日差しを浴びながら、ゆっくりと進む道はその時間の流れも緩やかで優しい。

(ねむ・・・)

うとうととした眠気に襲われながらも、良佳はポケットから携帯電話を取り出した。待ち受けには寂しげな月がただ映るのみで新着のメールはない。

相変わらず返信はなく、届いたはずの気持ち(メール)は一方通行になったままだ。

(そんなに上手く行くはずない・・・・か)

本当ならばメールが届いただけで満足しなければいけないのに、一つの願いが叶えば、またすぐ次を期待する。それが人間の嫌な処。醜い処。自嘲気味に表情を歪めて、良佳は窓の外を眺める。そこには海が広がり、水面が太陽の光を受けてキラキラと輝いて見えた。

(きれい・・・)

導かれるように次の停車駅で下車すると、良佳は海岸へと歩き出す。さすがに観光地として有名な古都「鎌倉」は、海岸までの道筋があちらこちらに掲げられている為、初めて来た人間でも迷うことなく辿ることが出来る。良佳も案内の看板を辿り真っ直ぐに海へと辿り着いた。


「うわぁ」

思わず声が漏れる。目の前には見渡す限りの青い海、キラキラ光る水面が良佳を迎えてくれていた。

靴の中に砂が入ることも構わずに、良佳は階段を下りて砂浜へと下りる。コンクリートの地面とは全く違う感触のモノが、良佳の足を捉え靴に被さっていく。その感覚に知らずに顔が緩む。

冷たい冬の風が海上の潮の匂いを運んでは頬を掠め、髪を揺らした。

暫く海岸を歩く。犬の散歩をする人や、恋人同士だろうか男女が寄り添い歩いていくのが見えた。

一人でこんな処を歩いているのは自分くらいだろうと思って、余計可笑しくなる。なんだかそれが嬉しい。誰も自分を知らない。誰にも咎められない世界。誰にも侵されない・・・・自分。

当たり前のことなのに、あの狭い環境(セカイ)にはなかったもの。


不意に顔を上げると、反対から同じように一人で歩いてくる人がいる。

年の頃は同じくらい。何処かで見たような、綺麗な黒髪の端正な顔立ちをした男の人だった。

一瞬、目が合う。ドキッと胸が鼓動を打った気がした。

彼は、そのまま何事もなかったかのように良佳の横を通り過ぎ、行ってしまう。

後には寄せては返す、波の音だけが残り・・・・彼が通り過ぎた事を、ちょっと残念だと思った。

(・・・何が残念なんだか・・)

仁先生のことで懲りた筈なのに、そんなことを思う自分に吐き気がする。

良佳は一つ溜息を吐くと、砂浜に座った。ただ海を眺める。そこには静寂だけがあり、また他のものは何もない。


良佳はそのまま陽が沈むまで、空と水面に浮かぶ二つの太陽を眺めていた。







鎌倉、江の島海岸など数回訪れた事があります(^_^)

鶴岡八幡宮が綺麗でした。

そんなに近場ではないのですが、何故か好きなんですよね。

また機会があったら行きたいな~・・・と思いながら書きました。

そんなこんなで、更新です(^^ゞ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ