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雨━yoshika━


良佳は生徒指導室にいた。

目の前には生徒指導が担当の女教師がいて、後ろには担任の教師が呼び出されている。

その中で良佳は俯いたまま、ただ包帯に浮かぶ「赤」を指でなぞり目を閉じた。

「どういうことですか、岡崎先生」

『岡崎』とは、担任教師の名前。四十手前の中堅で、割と大らかな男性教師である。

「いや・・・あの」

「それじゃあ分かりませんよ」

歯切れの悪い岡崎の言葉に、生徒指導の『平山』女教師は声を荒げた。

いわゆる「お局」様的な彼女は、他の教師から一目置かれる存在で恐怖の対象。強いては教頭や校長も無闇に意見できないらしい・・・・そんな噂まであるほどだ。

うす暗い室内に、大の大人の声がこだまする。当の本人を置き去りに、大人は話を進めていく。

(誰も「私」の言葉なんか聞かない。「私」を知ろうとはしない)

良佳は自分の処分が決まるのを、ただ待っていた。その時だった。

「・・・七瀬、お前の言い分は?」

不意に岡崎が良佳に意見を求める。良佳は驚いて顔を上げた。

「・・・・」

突然の言葉に、何かを言わなければと口を開くがそれは言葉にはならずに、良佳はそのまま口を閉じる。言葉は難しい。その事を再認識させられた。

「あなたまで黙って]

良佳の態度が気にいらない様子で「大体っ」と、遠くでお局様の小言が始まる。岡崎はそれを宥め、良佳はまた一人沈黙した。

何を言えばいいのか分からない。肯定しても、否定しても、何かが違う気がして・・・・「高良 仁」・・・先生を許す事は出来ない。でも、先生のこれからの人生を壊したいとは思わない。

そんな事を鬱々と考えていると、窓を叩く滴の音に気づく。雨が降り出していた。

(雨・・・か・・・)

雨は好き。何も考えたくない時にその音をただ聞いている。静かに雨に打たれていると、哀しい事も辛い事も全てが流れていく気がした。

「とにかく、貴女は自宅で謹慎しなさい。処分はおって知らせます」

「・・・・・はい」

事件の事は何も言わずに良佳は頷いて、席を立つ。お局様・・・平山教師の鋭い視線を浴びながら生徒指導室を後にした。


『この世界の片隅に

私を理解してくれる人はいますか。

言葉は難しくて、

想いは届かないから。


自分が誰なのか

何故、生きているのか

その理由を問いて

私に「価値」を

くれませんか。


この世界の片隅で

この世界に生きる私に

誰か・・・・

━キヅイテクダサイ━  』


雨の中、電車を待つプラットホームのベンチに腰掛け良佳は携帯電話を握りしめる。顔も知らない、返事の返らない誰かに向け、今の思いを綴り送った。何で生きているんだろう。学校を出てからそんな事ばかりを考えている自分がいる。ふと横を見ると、少し離れたベンチに同じ年ごろの男の子が座っていた。

(綺麗な子・・・)

黒髪に耳に光る銀のピアス。目元は涼しげで、その手には同じように携帯電話が握られている。彼の耳からは白いコードが伸び、こちらに気づく様子はない。何を聞いているんだろう・・・難しい表情をしている彼に良佳はクスッと少し笑った。

やがて電車がホームへと入ってきて、良佳はその電車に乗り込む。彼はその電車に視線をやるでもなく、ただそのままベンチに座っていた。

「・・・バイバイ」

ドアの閉まる間際に、良佳は彼に向け小声で呟く。そこに意味はなかったが、何故かそうしたいと思った。彼は、自分に似ている・・・・良佳の心の何処かが、そう告げていたのかも知れない・・・。

電車は走り出し、雨の街並みを映す。

良佳は駅にたどり着くまでの間、その光景を茫然と眺めていた。



後日。学校内、掲示板。


『以下の者、

七日間の停学処分に処す。

 二年  七瀬 良佳  』


結局、良佳は無言のまま停学に決まる。

お局様は「退学」を声高に主張していたが、現場を目の当たりにした他の教師からの言い分と別で事情を聞かれていた「高良 仁」の話が大方一致したことにより「退学」は免れたらしい。

一方の「高良 仁」は・・・自分から「高校」を立ち去ったそうだ。

彼が何を話したのかは分からないが、担任の岡崎を通して一言だけ・・・「すまなかった」と良佳に告げられた時も、ピンと来なくてただ人形のように頷く事しか出来なかった。










雨の中の一幕でした。

久しぶりの更新・・・どうなんでしょうね(^_^;)


自分でも今後どうなるのか予測出来ていません・・・。

それでも書き続けます。

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