灯━misumi━
自宅から小一時間。深澄の学校は都内でも名の知れた進学校である。
進学校と云う割には「自由さ」が売りな高校で、共学、私服登校、終にはピアスまで認めた呆れる学校だった。
言い方を変えれば、全てを「自己責任」に重視され、それから外れたモノはここにはいられない。それだけの事だ。深澄は呆れている半面、何にも縛られない干渉されない、この「校風」が気にいっている。
「崎本~」
校門をくぐるや否や、大声で名前を呼ばれ深澄は立ち止まる。顔を上げると目の前から走り寄る人影が見えた。
「おはよう、流石。朝からどうしたんだ?」
深澄は冷静に言葉を返し、「流石」と呼ばれる男子高校生は深澄の眼前で手を合わせて頭を下げる。謝罪のつもりらしい。
「・・・・」
「悪い。今日提出のプリント・・・忘れた」
予想通りというか、予感的中とでもいうか。これは深澄にとっては「想定内」の出来事。
「流石・・・大丈夫。先生には俺から言っとくよ」
これも、「流石」にとっては予定通りの俺の「反応」。腹を探り合う毎日。
頭のいい学校だけあって、悪知恵の働く奴は山ほどいる。相手をいかに利用するか。それだけのことだ。
(信用出来る奴なんて、いない・・・)
信じれば「裏切られる」。日々蹴落としあいの学校生活。
「助かるよ~、マジ困った時は「崎本大先生」だよ!」
相手への世辞も忘れない。これが「大人の常識」。
反吐が出そうなほどの嘘つき顔を浮かべる同級生を見ながら、深澄は謙遜の笑みを見せた。
「流石、褒めすぎ。とりあえずこの件は伝えておくから」
極力嫌味にならないように、「言葉」は慎重に選んで手短に「要件」を済ませる。こんな処で時間を無駄に費やしたくはない。それも、クダラナイ頼み事なら尚更だ。
「ああ、頼むよ。じゃあ、また後でな」
流石も空気を感じたのか、それ以上無駄な言葉を遣うことなく校舎へと消えて行った。
不意に溜息が出る。「優等生」を演じるのは疲れる。後々の事を考えれば優等生を演じていた方が都合は良い。内申のこともあるし、何より単純な大人たちを味方につけておくのは必要な事だろう。だからコレは仕方のない代償。
(とりあえず、職員室が先か)
始業までには十分な時間がある。やる事を順序立てて一つ一つこなせばいいのだ。
今日はあの変な「メール」のせいで気分が乗らないが、それでも日常は始まる。
深澄は仕方なく、職員室へと歩き出す。
足取りは重かった・・・。
深澄の日常が始まりました。
サブタイトルが中々上手くいきませんね(^_^;)
良佳を思って付けたんですが、深澄には何のことやら・・・?
もうすぐ二人は出会えそうです(^^ゞ