始まり━yoshika━
息が出来ない。
都会はまるで海の様に深くて・・・。
気を抜けばすぐに波にのまれそう。
地上から見る月は酷く淋しく、
空に浮かび上がり揺れている。
この空の下、確かに私は生きていた。
1月の寒いある日。夕暮れ時はとうに過ぎ、子供たちで賑わっていた公園は闇と共に静寂に包まれた。
外灯の当たるベンチに座り、彼女は空を見上げている。
冷たくなった手には、白色の携帯電話。今どきの女子高生の筈が、携帯には月を象ったストラップが一つ付いているだけで、なんとも味気ないモノに見える。
白い息を幾度も吐き、鼻を赤く染めながら、少女はただ何かを待っていた。
「七瀬 良佳」17歳の冬。
彼女には帰る場所がない。行く宛も、行きたい処も別段見つからない。
正確には「帰りたくない」と思う。家の中は冷え切り、家族と呼べるものはもはや形を持たない体裁を保つためのガラクタに過ぎなかった。
学校にも自分の居場所はない。存在を忘れられた影人形。
悲しくはない。淋しいとも思わない。思いたくない。
一度、その気持ちを「言葉」にしたら全てが無くなってしまう気がする。良佳はそう思った。
だから彼女は、口に出せないその「言葉」を詩に綴る。
誰に伝えるわけでもないその叫びは、携帯のメールボックスに「未送信」と共に積み重なっていく。
想いはどんどん膨らみ、今日もそれは「保存」された。
「保存・・・と、よし」
独り言で保存できたことを確認すると、良佳はもう一度空を見る。
「雪・・・降るかな」
「積もるといいな」
呟きは白い息となり消えていく。寒空の下、良佳はぼうっと空を見続けた。
この物語は二人の人物を追っていきます。
一章につき、話は二つあると思ってください。
恋愛を描くのは初めてなので、うまく描こうとか考えずに。
それぞれの気持ちとか、心の葛藤が描けたら良いなと思います。
よろしくお願いします。