寝すぎ49 屋上プール! 可愛い水着の娘姉妹ときゃっきゃうふふ! と、満たされ……煩悩に負けた男。
――ネルトは、満たされていた。
「さあ、いくわよ! 受けてみなさい! オジサマ!」
「おう! 来いよ! パフ!」
暖かな陽の光がそそぐ下、障壁でそこだけ空間が快適に保たれたピースフル一家が住むタワーマンション屋上の露天風呂併設のプール。
ばしゃ! と飛沫とともに水の中から高く高く跳び上がったパフィールがいまはポニーテールに結った金の髪と、胸もとを開いたタイプで下はハイレグ気味なピンクと白の二色の水着につつまれた肢体と育ちに育ったふたつのふくらみをぱふぷるにゅんと空中で躍らせる。
「たあああっ!」
そして、〈水泡球〉――プールの機能で水の一部を魔力でビーチボール状に成形した水の球に右手のひらをおもいきり叩きつけた。
水を成形してできた球である以上、当然普通のボールよりも脆く、特に受ける際には絶妙な力加減が求められる。
パァン! と小気味よい音とともにゴウッと高速で迫りくるそれをネルトは――
「うらああぁっ!」
――割れきる前に力まかせに全力パンチではじき返した。
「ちょっ!? わぷっ!?」
バッシャアン! と割れた球の直撃をくらい、飛沫とともにあえなく撃墜されるパフィール。
ザパッ……!
「もー! ずるいわよ! オジサマっ!」
「ははっ! 悪ぃ、悪ぃ!」
――ネルトは、満たされていた。
ばしゃりと一度沈んだプールの中から起き上がり、頬を赤らめぷんすかぷんと抗議するパフィールのその艶やかな肌をぱふつるるんと雫が滴る様子を上から下までじっくりと目で堪能する。
「ん。ネルおじ。今度は、わたし。パフねえの仇、とらせてもらう」
「お! いいぜ! 来いよ! スピー!」
水色でトップスがひらひらとして可愛らしく、下はローレグの水着を着たスピーリアが静かな熱い闘志を青い瞳にたたえる。
「んんんんん……!」
すると、プールの機能で成形される〈水泡球〉に触れ、さらに自身の魔力をそそぎこみプールの水を追加調整。自分の体の大きさをゆうに超える大玉をつくりだした。
「ちょっ!? おいっ!?」
「ん……! 名づけて、〈巨大水泡球〉。ネルおじ。覚悟」
魔力で操った水の力で浮かび上がらせてからそれにそっと両手を添えると、強烈な魔力噴射とともにスピーリアはネルトに向かって山なりに撃ちだした。
――うおっ!? マジか!? さすがに、このデカさにさっきみたいに力まかせにパンチしたら、返す前に即座に割れて俺に水がバッシャアン! か!? ならよ、ここは……!
すっと掲げた右手のひら。迎撃するネルトは、即座にその一点に魔力を集中させる。
ただありあまる力にまかせた先ほどとは真逆といえる超微細な魔力コントロール。そこに形成されるのは、触れたものを割れないようにそっとやわらかく包みこむ魔力の膜。
両親ゆずりの圧倒的才能を持った娘姉妹であってもふたりで全力で協力してようやく、であろう神業の域に達するその魔力コントロールを20年遅れてきた超新星男ネルトは、いともたやすく成し遂げていた。
――だが、そこに。
「スキル。〈精神超感応――掌握〉。わたしを見て」
「うおっ!?」
ガクン、と山なりの巨大な水の玉を見上げていたネルトの視線と顔が強制的に正面のスピーリアに向けられた。
だが。
「へへっ! スピーならっ! そう来ると思ってたぜっ!」
だが、水の玉から視線を外されながらも薄く笑みを浮かべるネルトにあせりはない。
英雄冒険者並の超感覚を持つネルトにとって、そう来るのが予想できてさえいれば、この程度の速さと大きさの水の玉程度は見なくても容易に対処が可能。
……はらり。
「あ。とれた」
「ぶっ!?」
……だが、ネルトの余裕はそこまでだった。
突然、ネルトの視線がまじまじと向けられたその前で、そのすぴぷるぷにゅむんとしたふたつのふくらみを覆う水色水着のトップスが、はらりととれ――
「…………へっ?」
「……えっち」
――その下を覆うあえて肩ひもを下にずらして見えなくしておいた白の水着を露わにする。
「う、わああぁぁっ!?」
そして、スピーリアが白の水着まではらりととれて落ちないように胸の下を腕でささえて、ぽっと頬を赤らめる中――あえなく煩悩に負けた無防備男を真上から水の大玉が直撃した。




