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寝すぎたオッサン、無双する〜親友カップルをかばって昏睡から20年、目覚めたら俺のハズレスキル〈睡眠〉が万能究極化してて最強でした。超人気配信冒険者の親友の娘姉妹が、おじサマと慕って離してくれません〜  作者: ミオニチ
ネルト配信冒険者デビュー〜この一撃にすべてをかけて 編

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48/56

寝すぎ48 締めは親指立て(サムズアップ)で! 配信デビュー大成功! 万雷の歓声と拍手と、……キメキメでポーズをとる男。

 ピコン、ピコン、ピコン。


『お、おおおおおっ!?』

『い、いいいい、一撃でっ!?』

『あ、あああのクッソ馬鹿デカい鳥魔物が粉々って、ど、どどどんな威力してんだよっ!?』


『くははは! よい! よいぞ! 久方ぶりに、血湧く! 血湧くのうっ! うむ! よいものを魅せてもらった! 待っておるぞ! ネルト・グローアップ! おぬしが、おぬしらが〈第一の果て〉の〈果ての塔〉をすべて攻略し、我ら幹部連の待つ〈人類の最前線〉へと到達するのを! くははは! ……では、わしは推し活に忙しいので、これにてさらばじゃ! でゅふふふ……! ああ、待ち遠しいのう……! プリマミちゅわ』

『クイッ。申し訳ありませんが、これ以上品格を落とされる前に切らせていただきます。……まあ、相手の魔物が雑魚すぎて今日は参考程度ですが、ネルト・グローアップ、その名覚えておきましょう』

『ネルト……! 君なら、必ずやり遂げると信じていたよ……! おめでとう……! 僕の親友……!』

『本当に、本当に、おめでとうございます……! ネルトさん……! あと、少しお休みがとれたので、近くハワードといっしょに帰りますね! それまで娘たちをよろしくお願いします……!』


『え、え……!? さ、さっきから、このコメント欄、もしかして、す、すごい人たちが書きこんでない……!?』

『あ? コメント? 何言ってんだ? そんなのより、すげえのは、ネルト・グローアップその本人(ひと)だろ! マジで、マジですげえ……! とんでもねえ……!』


 ピコン、ピコン、ピコン。


『『『チャリンチャリンチャリンチャリンチャリン――』』』


 ――まるで万雷の歓声と拍手のごとく、ネルトへの驚愕と賞賛のコメントと応援課金音は、どこまでもどこまでも続いていった。


 そして。


「オジサマっ!」


「ネルおじっ!」


「うおっ! パフ……! スピー……!」


 金色のツインテールをふりみだし、銀髪をなびかせ、パフィールとスピーリアの娘姉妹が左右からネルトに――大好きな、昨日までよりももっと大好きになったおじサマに抱きつく。


 少しの間、戸惑うようにしていたネルトだったが、やがて左右の手を姉妹に伸ばすと、抱きつかれたままぽんぽんと愛おしむようにそれぞれの頭をなでた。


 ピコン。


『あ、ああっ……! また……!』

『いや、でも、悔しいけどしょうがねえよ……!』

『ああ……! ネルトなら、パフちゃんとスピーちゃんを託せるさ……!』


『『『チャリンチャリンチャリンチャリンチャリン――』』』


 ――君ら、姉妹のいったい何なん? と思わずツッコミを入れたくなる、いわゆる後方腕組み系強火ファンも祝福のコメントをしながら、応援課金をネルトと姉妹双方に惜しみなく贈った。


 ――そして、興奮冷めやらぬままに。


「パフと!」


「スピー」


「「ピースフル姉妹の〈ぴすぴす攻略配信〉〜!。スペシャルゲストを迎えた今回のコラボ配信はこれにておしまい〜!。まったね〜!。ぴすぴす〜!。」」


「ネルト・グローアップの――親指立て(サァムズアァップ)タァイムッ! パフとスピーに手伝ってもらった俺の初回デビュー放送はこれにて終了だっ! 次もおもしれぇものたっぷり魅せてやるから、気に入ったらまた観てくれっ! なぁに、損はさせねえぜっ!」


 頬を赤らめた姉パフィールと、やはり無表情の妹スピーリアがふたりしてくるくると回ってから両手でピースサインをつくってふりふり。


 その横で、まさかのダンジョンボス一撃撃破という予期せず成し遂げた偉業の成果で2割増しでカッコよく見える――かもしれないネルトがキラリと歯など光らせた渾身のドヤ笑顔とともに、グッと右親指を立てる(サムズアップする)


 ピコン。


『両配信とも、本当に、本当に最高だったぜ!』

『ぴすぴす〜!』

『どっちも次もまた必ず観るよ! グッ!(親指立て)』


『『『チャリンチャリンチャリンチャリンチャリン――』』』


 ――次もまた観にくると数多くのリスナーが約束とともに最後の祝福とばかりに応援課金をし、いくつもの波乱はありながら、終わってみれば大成功のままに20年ぶりに目覚めた超新星男、ネルト・グローアップの配信デビューはこうして幕を閉じた。



  *



「ああ。これは、イケないなぁ」


 ――真っ暗な部屋。


 そこだけ不自然に真上から照らされたように光る、一人がけのソファに座っていた赤く長い髪の男は、ゆらりと立ち上がると、そうつぶやいた。


「次代を築く主役たるこのボクの傍らにあるべき麗しきヒロインたちをまさかこんな時代遅れで有象無象の端役がかすめ盗るだなんてね……? ネルト・グローアップ……。その名前、覚えておいてあげよう。このボクの手で直々にキミとボクとの役者の違いをとくと思い知らせ、キミをこの世界という舞台から最っ高に惨めに退場させるそのときまで、ね……!」


 いまはもう何も映さない終了した配信画面を見つめ――自宅で独り、誰も観ていないにもかかわらず、その赤い前髪を気障ったらしくかき上げ、バッチリ着こんだキメキメの格好でキメキメのポーズをとりながら。


 男の名は、赤獅子レオキン・オンステージ。保有スキル〈脚光〉。


 そして――自らを()()()()()()()であると信じてやまない男。

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