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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

催眠にかかったら義妹がさらに可愛くなった。

作者: シガナイ


催眠とは暗示などで睡眠に似た状態にすること。または、精神的変化、肉体的変化が引き起こされるものであるという。まぁ、他人を自分の意のままに操れそうな力とでもイメージしてくれ。


さて、そんな危険そうな催眠なのだが俺はそんな催眠に絶賛かかっている。

どうして催眠にかかっているのにそれがわかっているかだって?

…それは実際には催眠にはかかっていないからだ。


そう。俺は今、催眠にかかったフリをしているのだ。

そして眼の前には俺に抱きついている義妹がいる。どうしてこうなってしまったのか。

ニ時間ほど遡る。


午後9時を過ぎた頃だった。テレビを見ていると催眠術師という男がバラエティ番組にて催眠術を披露していた。わさびを食べても辛くないように食べていたり、ペットボトルをアスリートの人が持ち上げることができなかったり、簡単に押されただけで倒されたりと色々とやっていた。

タレントさんの反応が面白くてついつい見入ってしまうが、心の中では疑っている俺もいた。だが、催眠は男のロマンでもある!異論は認めるぞ。


「邪魔、どけ」

「へいへい、よっと…」


ソファーで寝転びながら見ていた俺を足でどかしたのは数年前に母親が再婚してできた妹であった。高校生になってできた義妹であるため、最初はすごく違和感があったな。

しかも、これがかなりの毒舌っぷりで最初は驚いたな。


「はじめまして、今日からよろしくね?」

「は?気持ち悪いんだけど。てか、あんたなんか家族だと思ってないから」

「……え?」


初対面でこれである。

両親が凍りついたのを今でも覚えているぞ。相手の父親の冷や汗が止まらないのを俺は可哀想な目できっと見ていたのだろう。

そんな義妹でも俺は懲りずに話しかけたり、おやつなどで懐柔して今に至るのだ。

前までは目が合えば死の言葉が飛んできたが今では邪魔の一言で終わる。大きな一歩だろ?


「ていうか…なんで一緒に座っているのよ!」

「え?だって俺もテレビ見たいし」

「後で見ればいいでしょ?」

「え~?でもこれ録画してないし」

「こんなしょうもない番組見るくらいなら勉強してた方がマシよ」

「しょうもないって…」

「しょうもないわよ!催眠術なんてあるわけ無いもの」


断言する我が義妹はそういう。

絶賛番組では術師がタレントに催眠術をかけているところだった。

俺はそれを見て少しだけ妙な事を思いつく。


「じゃあ実際にやってみようか」

「は?やるわけ無いじゃない」

「あれ?もしかして催眠にかかるのが怖い?そっか、じゃあ仕方がないな。俺は部屋に…」

「誰が怖いなんて言ったのよ。やるわよ!やれば良いんでしょ!?」


俺は笑みを浮かべ、ソファーに座りなおす。

俺が考えたことは催眠にかかってしまったドッキリである。この流れなら本来であれば催眠にかかるのは我が義妹である。だが、俺は全くと言っていいほど催眠術のことなど知らない!

ならば、義妹に催眠術をかけて貰えば良いのでは?という考えに至ったのだ。そうすれば、もしかしたら我が義妹も俺のことを心配してくれる姿を見れるかもしれない。という下衆な考えも僅かにある。


「じゃあ、まずは俺からか。霞、目を瞑ってくれ」

「へ、変な事をするんじゃないわよ?」

「する訳無いだろ。それに俺が中学生に手を出したら犯罪だ」

「ロリコンなら出すかもでしょ?」

「誰がロリコンだ!?……じゃあ、俺が言うことを繰り返して」

「わ、わかったわ」


霞は不服そうに目を瞑る。


「お兄ちゃんは世界一優しい」

「お兄ちゃんはせかい…って何よその台詞は!?」

「ほら、繰り返さないと駄目だろ?」

「ぐ…お兄ちゃんは世界一…ヤサシイ」


物凄く嫌そうに言葉を繰り返す。

おっかしいな?一石二鳥だと思ってやったことが仇になっている気がする。涙が止まらねぇよ。


「お兄ちゃんはカッコイイ!」

「お兄ちゃんは…カッコイイ」


それから何度か俺が言った言葉を繰り返して目を開けさせる。

物凄く嫌そうに、苦しそうに繰り返すから俺が虐めているんではないかと途中から罪悪感が凄かった。


「ほら、俺は誰だ?言ってみて」

「ロリコン野郎」

「あれぇ!?」

「間違えたわ」

「だよな。焦ったぜ」

「ロリコンクソ野郎」

「余計に酷くなった。あれぇ、おかしいな。…どうやら俺には催眠術は無理なようだ」

「ほらね、そんなのあるわけ無いのよ」


催眠術が無いことがそんなに嬉しいのか。

霞は俺を負かすことができて嬉しいのか、なぜか今日一番の笑顔だった。

だが、本題はここではない。俺の催眠術がかからないのは百も承知の上である。俺の狙いは次だ。


「じゃあ、今度は霞が俺に催眠術をかけてくれよ」

「は?なんでそんな面倒な事をしなくちゃならないのよ」

「だって、俺が単に下手くそなだけかもしれないだろ?俺には才能がなかったが、霞にはあるかもしれないからな」

「…いいわよ。やってやるわ」


霞はちょっと待っててと言いながらリビングを出てニ階に続く階段を登っていく。

ドアの開ける音がしたから恐らく自室に戻ったのだろう。直ぐにドアの開く音がして、霞が戻ってくる。

霞の手には変な道具が握られていた。


「……お前、それ」

「こういうのを目の前で振れば良いんでしょ?」


霞が持ってきたのは糸にくくりつけられた五円玉だった。

……いや何であるん?もしかしてだけど催眠を試した事があるのか?霞が!?

いやいや、俺の勘違いだろ。中学校の友達に渡されたとか、学校の授業で使ったとか、ほら理科の振り子の運動とかで使ったんだよ。


「お、おう。じゃあ早速始めてくれ」

「わかったわ。じゃあ、この五円玉をずっと見続けてね。すると段々と瞼が重くなって、そのまま眠ってしまうわ」


あれ?思ったよりも本格的だな?

やけに真剣な顔をして、五円玉を振り子のように動かす霞とそれをジッと見続ける俺。

俺は作戦通りに瞼をゆっくりと下ろしていく。そして、そのまま眠るように顔を下に向ける。

よし、俺の演技は完璧だな


「嘘…本当に成功したの?」


俺が眠るフリをすると霞の小さな声が聞こえてくる。


「やった、本当に成功するなんて。あ、あの本持ってこないと」


霞の足音がニ階へと行ってしまう。

あの本?…な、何をする気なんだ。実はドッキリでしたという感じに終わらしたかったんだが、そうも行かなくなってしまった。凄く気になる!

目を閉じてワクワクしながら待っていると霞が戻ってきた。


「えっと、えっと…これね。催眠が成功したらその人はもう貴方だけの人。なんでもお願いを叶えてくれる素敵なお人形です。…本当なのかしら?」


か、霞!?それなんて言う本なの?絶対に普通の催眠術が書かれているような本じゃないだろ。

というかなんでそんな物を持っているんだよ。え、おかしいよな?年頃の女の子が持つような本では無いことは確かだよな?


「お、お兄ちゃん…目を開けて?」


お兄ちゃん!?…そ、そんな風に今まで呼んでくれなかったのに。なんて催眠は素晴らしいんだ。

俺はゆっくりと目を開ける。

なるべく無表情で視線を真っ直ぐにする。霞が持っている本の題名が目に入る。


『催眠術マニュアル』


題名は至って普通だった。

でも内容が怖すぎるだろ。なんだよ理想のお人形さんって。もはや黒魔術とかの領域だろそれ。


「……お兄ちゃん、私の事をどう思っているのか教えて?」


なんだろう。物凄く可愛らしい質問が飛んできたんだが?

これはあれか?正直に答えるべきなんだろうか。


「霞の事は大切な家族だと思っているぞ」


霞の反応としては「キモッ」か「ロリコン」か「死ね」の三択だな。さて、どれが来ても耐えられるだけの心の準備をしておくか。


「えへへ…ふふ」


霞はソファーに置いてあるクッションを抱きしめながらニヤけていた。


いや可愛いかよ!

反応が思っていたのとちょっと違う。あれ?いつもの毒マシマシの言葉が来ない……だと?


「じゃ、じゃあ、もしも私がさ?お兄ちゃんと一緒に遊びたいって言ったらどうする?」

「一緒に遊ぶぞ?」

「じゃあ、一緒に寝たいって言ったら?」

「一緒に寝るぞ?」


バタバタと足を動かしてクッションに頭を埋める我が妹の奇行を俺は間近で見ていた。

いやぁ…思っていたのとは違うが、これはこれで…アリだな。そう思う自分がいる。


「本当にそう思ってるの?いつもあんなに冷たくしてるのに?」

「そう思っている」

「ロリコンなの?」

「違う!」

「……妙に力強く否定するね」


しまった!つい癖で感情が強く出てしまった。

これはバレるか?


「…ロリコンじゃないんだ」


悲しそうな顔をする霞。

我が妹よ、兄がロリコンではなくてなぜそこまで落胆する必要があるのだ?もっと喜んでくれないか?

まぁ、バレていないようで何よりなのだが…俺はいつまでこうしてフリを続けていれば良いんだ?


「やっぱり、お兄ちゃんが寝ている時に催眠を試しても意味ないんだ」


兄が寝ている時にこの妹は何をしているんだ?というかいつの間に俺の部屋に来ていたんだ?

というか、やっぱりあの五円玉は催眠用かよ。


「でも、なんで?私、いつも酷いこと言ってるのに…まさかドM?」

「違うぞ」


お前の兄はそれでいいのか?ロリコンでドMだったら属性マシマシになっちゃうだろ?


「お兄ちゃんは霞のお兄ちゃんだ。だから、そんなのは当たり前なんだよ」

「…じゃあもっと甘えてもいい?」

「おう、じゃんじゃん甘えてくれ」

「わかった」


ガチャッ!


「帰ったわよ~」

「帰ったぞー」


両親が帰宅してきた。今日は結婚記念日ということで二人はデートに言っていたのだ。

俺たちはその邪魔をしないために家で留守番をしていたということになる。


さて、切りもいいし、催眠ドッキリもこれで終わりにしないとな。変な誤解を招くことになる。


俺が霞にドッキリだと伝えようとした時だった。霞は俺にギュッと抱きついてきた。

風呂上がりなのかシャンプーのいい匂いがする。だがそんな事はどうでもいい。


「何をしているんだ?」

「可愛い妹に嘘をついた悪いお兄ちゃんに悪戯してるの」

「………へ?」


ニヤニヤしながら霞は俺にそう言った。顔は真っ赤にしているが、してやったりの表情をしている。

…バレてる!?いつからだ?


「大変だね?このまま私が抱きついていたらお父さんたちはどう思う?」

「待つんだ。昨日まで険悪な雰囲気だった俺たちがいきなりこんな風にしていれば疑われるのは俺だし、母さんたちは混乱する」

「その通りよ。でもね?もう私はどうでもいいの。もう恥も外聞もないわ」


不味い、妹が恥ずかしすぎて逆に開き直った人になってしまった。

この状態の人は一種の無敵状態だ。どんなに説得をしても無意味になるだろう。

だから説得ではなく俺は交渉することにした。


「言うことを聞く。今回の件は俺が悪かった。だから、お前の言うことを何でも聞く」

「……なんでも?」

「え?あ、あぁ。なんでもだ。俺に叶えられることなら何でも聞くぞ」

「そう。……じゃあ、許してあげる」


霞は俺から離れてソファーに座る。

そのタイミングで両親はリビングへと入ってきた。


「あら?今日は珍しく一緒にテレビを見てるのね?」

「あぁ、偶然に見たいテレビが一緒だったんだ」

「そう。霞ちゃん、庵が変な事しなかった?」


ギクぅッ!

俺は祈るように霞を横目で見る。


「うん、大丈夫」

「そう、それなら良かったわ」

「ふぅ…」


俺は息を吐く。

そしてリビングを一刻も早く出たいため、部屋に戻ろうとする。


「あら?これ…何かしら」


母さんの指の先には『催眠術マニュアル』と糸にくくりつけられた五円玉があった。

見る見る霞の顔が赤くなっていく。


「あぁ、さっきまでテレビで催眠術の特集をやってたんだよ。少しだけ興味があったから二人でやってたんだ。まぁ、あまり効果はなかったけどね」

「へぇ~…あんたは直ぐに騙されそうだけどね」

「まぁね」


そう言って五円玉と本を回収する。


「わ、私明日の学校の準備をしないと」


そして、俺たちはそのままリビングを出てニ階に上がる。


「ほら、これな」

「あ、ありがとう」

「お、おう。じゃあ、おやすみ」


本と五円玉を霞に返すと素直にお礼を言われる。俺が部屋に戻ろうとすると服の端を掴まれた。


「ちょっと待ちなさいよ。さっきの約束、嘘じゃないでしょうね?」

「さっきの約束?」

「なんでも言う事聞くって」

「…あぁ、嘘じゃないぞ?」


とっさに言った言葉ではあるが、嘘というわけでもない。

霞のお願いであれば大体は聞く覚悟はあるからな。まぁ、俺にもできないことはあるから、手加減してくれると嬉しいんだけどな。


「じゃあさ…今日、一緒に寝てよ?」


小さな声で恥ずかしそうにそう告げるお願いはあまりにも可愛すぎるものであった。


「いいぞ?お兄ちゃんを抱き枕にしてもいいからな?」

「はぁ?キモ、死ねよ」

「あれぇ?」


その日以降、俺が霞と一緒に寝ることはなかった。

あの時の霞はどこに行ったのだろうかと思うほど、相変わらず言葉は毒々しい。


「ロリコン、早く起きろ」

「だから俺はロリコンではないぞ」


だが、何も変化が無いわけではない。強いて変化を挙げるとするならば…。


「クソ兄貴、早くしないと一緒に朝ごはん食べれないでしょ?」


さらに可愛くなったことだろうか?

こういう系を初めて書いたが…難しい。

因みに筆者は弟なので兄の気持ちも姉の気持ちもわからない…誰か教えて。


良いなと思ってくれたらぜひとも評価をお願いします。

では次の投稿をお楽しみしてください。O_0

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