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「お父様、おかしくありませんか?」
馬車は王宮に到着し停まったはずなのに御者が一向に扉を叩いてこないことを不思議に思ったティナが父親に問いかけたときだった…
「旦那様、申し訳ありませんが…」
「どうした?」
御者の疲れ果てた声が聞こえたので、父親がカーテンを開けると、そこにはティナがあまり顔を見たくない人物が立っていたのだ。
「セシリア・パーマーさんだわ…」
「友人…という感じではないね…」
ティナの様子がおかしいことに気づいた兄は父親に断りを入れ、先に降りて話をつけにいった。
「侯爵家の馬車を止めるだなんて、常識を知らないのかしら…?」
母親は呆れ返っている。
「最近、アロイス様とご一緒している令嬢ですわ…」
「そう…あの子が…。」
「お母様、私が話を…」
「大丈夫よ。きっともうすぐ貴女の騎士が迎えにくるはずだから…。」
「??」
不思議がるティナの表情をクスクスしながら母親は眺めていた。そんなとき、コンコンと馬車の扉がノックされる。
「サージス侯爵夫人、クリスティナ嬢、私です。」
「フレデリック様!?」
「殿下、お待ちしてましたわ。」
ティナはフレッドの登場に驚くが、母親は来ることを知っていたような反応だった。
フレッドの手を借りて、馬車から降りる。
「こちらの不手際で遅くなり申し訳ございませんでした。」
「さっきの令嬢は?」
「衛兵に一旦引きとってもらいました。本来であれば男爵令嬢ですので入場は終わっているのですが、本日のパーティは身分が高い子息がエスコートとのことで、勝手にここで待っていたようです。」
「そう…。本来であれば、そのエスコートするとかいう子息が迎えに行くのが良かったかもしれないわね。」
「全くその通りです。まさか、そんなこともわからない貴族が妹のパーティに紛れ込んでいるとは…」
「まあ、何事もなくて良かったわ。」
そう言って母親は父親と兄と「先に行っているわ。」と行ってしまった。
「クリスティナ嬢、今日も素敵だよ。」
「あ、ありがとうございます。フレデリック様も今日は一段と素敵ですわ。」
「ありがとう。では、お手をどうぞ。」
「はい、宜しくお願いします。」
会場の入口を過ぎて王族の控室へ通される。
「ティナ!いらっしゃい!」
「アンヌ様、ご機嫌よう。お誕生日おめでとうございます。」
「ありがとう!」
「ジェイス殿下、ご機嫌よう。」
「ああ、クリスティナ嬢、こんばんは。今日はマリーアンヌのためにありがとう。」
「勿体ないお言葉です。」
「でも、大丈夫だった?あの方がサージス侯爵家の馬車を止めたって…」
「はい、少し時間はかかりましたが、フレデリック様がわざわざお迎えにきてくださいましたし。」
「大切な君に何かあってからでは困るからね。」
「た、大切!?」
「俺にとって君は大切だよ?」
「お兄様?私とジェイス様もいるのよ?ふたりの世界に入らないでちょうだい。」
「マリーアンヌ、いいではないか?お似合いだぞ?クリスティナ嬢?」
「皆様、からかわないで…」
「俺は至って真剣だよ?」
「ふえっ!?」
ティナは驚きすぎて変な声が出てしまった。
「そんな所も可愛すぎるね。もっと見ていたいけど、そろそろ入場だから行こうか?」
フレッドはニコニコしながらティナに手を差し出した。
「宜しくお願いします。」
会場内には既に入場を終えた参加者達が次の入場を待っていて。
サージス侯爵家の馬車を止めたセシリアだったが、とりあえず謝ったら解放されたのをいいことに、アロイスと入場して彼にべったりしていた。
「アロイスの奴、サージス嬢ではない令嬢を連れているぞ…」
「しかも、男爵令嬢なんだろ…?」
「おいおい!正気なのか…!?」
「だが、アロイスが先に入場したし、サージス侯爵家も入場済となると、きっとサージス嬢のエスコートは…」
子息達からはアロイスの行動がわからないといった声が多数挙がっているが、ティナがこの次に入場してくることに期待していた。
「やはり、リストス子息はあの男爵令嬢をエスコートしましたわ!」
「信じられません!」
「ですが、この流れですとクリスティナ様のエスコートはきっと…」
「そ、そうですわね!寧ろ喜ばしいことですわ!」
令嬢達は次の入場がティナとフレッドだと気づいている。
しかし、そんな周りの声も聞こえないほどに、アロイスとセシリアはふたりの世界にいた。
「アロイス、まだパーティは始まらないの?」
「あのね、セシリア。パーティの主役がまだだろう?」
「あれ?このパーティってなんのパーティだっけ?」
「君は忘れやすいんだね?マリーアンヌ王女殿下の誕生パーティだよ。」
「王女のパーティだったのね!」
「セシリア、今は近くに俺しかいないからいいけれど王女殿下だよ?ちゃんと目上の御方には…」
「えっ、だって、同じ学園の生徒じゃない?」
「ここは学園ではなく、社交界だからそれがルールだよ?
君は俺と…」
アロイスが「付き合っているのだからそれ位のルールは分かっていてほしいな。」と言いたかったのだが、次の入場が告げられた。
「フレデリック·ヴァン·ルーディーン王太子殿下とクリスティナ·サージス侯爵令嬢のご入場です。」
扉が開き、ティナとフレッドは入場する。
参加している生徒達は「やはり、お似合いのおふたりだわ…」とうっとりしている者ばかり。
貴族達はサージス嬢が王太子殿下の婚約者になるのは時間の問題か…?と思って見つめていた。
そんな周りの目をアロイスは忌々しげに見つつも驚きを隠しきれないでいた。
「どうして、フレデリック殿下がエスコートを…
義兄殿に頼んだのではないのか…」
「ねえアロイス、クリスティナさんはどうして王太子殿下のエスコートを受けているの?
アロイスの婚約者なのに、まるで王太子殿下の婚約者みたいよ?」
「俺は今日君をエスコートしているから、従兄としてフレデリック殿下がエスコートしているのだと思う…」
「えっ!?クリスティナさんって王族の血を引いているの?」
「えっ?セシリア、君知らなかったのかい…?」
「だって、ただの侯爵家でしょ?」
セシリアは全く教養がないことがわかったが、それでもアロイスにとってセシリアは可愛くて仕方ないのだ。だから、彼は彼女の頭をなでながら、返事をする。
「クリスティナの母親である侯爵夫人は陛下の妹君だよ。それは、貴族の常識として知っておいてほしいかな?」
「わかったわ…でも私は田舎で育ったもの…知らないことが多くても仕方ないわ…」
「そうだね。クリスティナのお祖母様も他国の末姫であるから、幼い頃から彼女は品行方正だったんだ。」
「えっ!?アロイスったらそんな凄い人と婚約していたの!?」
「父上から言われただけだけどね。」
「ふうーん。」




