第九話「七夕に願いを!」
7月7日。晴れ。
朝。笑梨香ちゃんはいつものように洗濯物を干している。
その中、姫様は何かクレヨンで書いていた。
「姫様?何書いてるんだ?」
僕が上から覗いて何かしている姫様の様子を観察する。
「あー!見ちゃダメ!人に見られたら願いが叶わないの!!」
すぐさま紙とクレヨンを持って逃げようとする。
「願い?あー、そういや、7月7日って七夕だったな。」
「うん、だから見ちゃダメ!」
そう言って別の部屋へと走っていった。
しばらくぼーっとしているとさっき姫様が入った部屋のドアが勢いよく開いて姫様が笹を持って出てきた。
「じゃーん!七夕のやつ!!」
笹にはいくつかの短冊が吊るされていた。
「おいおい、全部、姫様の願い事か?!多すぎだろ、叶えてくれないよ、こんなには。」
「ううん、てっぺん以外は全部ナイトに向けての願いだから。」
「なんで僕なの?!」
予想外の言葉にビックリしてツッコミを入れる。
「だって、彦星さんと織姫さんは忙しいから叶えられない分はナイトに任せるんだもん。んで、ナイトの叶えられないのは彦星さんと織姫さんに任せるっ!」
「…なんの願い事が僕には叶えられないんだよ?」
ちょっとだけムッとした顔をして真剣に聞く。
「言わない!言ったら叶わないってさっきも言ったでしょ?」
その時、キッチンで作業をしていた笑梨香ちゃんがひょっこりと顔を出してきた。
「気になったんですけど、彦星と織姫ってどっちがお願い叶えてくれるの?」
「…うーん、どっちなのかな。」
「天女だよ、天女さん。」
僕が笑いかけながら二人に話しかける。
「てんにょさん?」
「そう、天女さん。」
姫様の微笑みに微笑み返して僕は答える。
「じゃあ、天女さんに叶えてもらう!」
「でも、全部叶えてもらえるわけじゃないでしょ?」
笑梨香ちゃんにそう言われてハッとする。
「それは、そうだけど…。」
しゅんっとした悲しい表情を姫様が見せる。
「だから、私がお手伝いしますよ!姫様のお願い事を!」
「え、ほんと?!ナイトも?!」
キラキラした顔をして笑梨香ちゃんに問いかける。
「うん!ナイト様も。」
「え!僕まで?!」
と、いうことで、姫様が作った短冊を11枚のうち、10枚を見ることにした。
「まずは〜…移動する時、歩かなくてよくなりますように…って。おいおい、最初から贅沢だな。」
呆れたように僕は短冊を机に置く。
「却下。」
「ダメー!叶えないとダメなの!」
ひとつため息ついて少し苦笑いしながら僕は聞き返す。
「どう叶えたらいいんだよ?」
「ナイトが足になる。」
「却下ー、次〜。」
こんな感じで短冊を見ていって9枚が贅沢すぎて却下された。
「僕らへの願いはラストかな。んー、学校に行きたい。…急に現実的な願いだな。」
「学校かー、行かせてあげてもいいのでは?」
「うん、アリだな。」
「ほ、ほんと?!」
嬉しそうな姫様を見ながら少し心にゆとりが出来た。
「ま、また手続きとか忙しいだろうけど。それはアリだな。」
嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねながら姫様の手には最後の短冊が握られていた。
それを見た僕は気になった。
「その残った一つが天女さんへの願い…。どんな贅沢な願い事かますます気になった!見せろー!」
僕が追いかけて短冊を掴もうとした。
「見せないもーん!っあ!」
そして姫様が持っていた短冊が窓から落ちていってしまう。
その短冊にはこう書かれていた。
『かぞくがいなくても、みんなとなかよくたのしく、すごせますように!』
と。