第八話「雨の日の出来事」
6月29日。雨。
雨ってさ、すごく嫌い。僕は雨の日は限って何かしらの用事がある。
今日もだ。まさかの今日は家族から呼ばれている。僕には家族がいる。
今は家にいないけど、お父さん。そして家にいるのは姉、妹、犬だ。
今回は妹から犬の体調が悪いということで病院に連れて行って欲しいらしい。
姉は今は大学に行ってるため、行くことになった。
「じゃあ、姫様をよろしくお願いします!今日中には帰るんで!」
「はい、任せてくださいっ!」
笑梨香ちゃんが微笑んで胸を叩いた。
「姫様、ワガママをあんまり言いすぎたらダメだからね!」
「むぅ。分かった。」
渋々、姫様も了承してくれた。
ということで、電車で田舎まで。
その頃、姫様と笑梨香ちゃんは…。
「私、姫様のこともっと知りたいなっ!」
「…私は知られたくないからいいもん、。」
まだなかなか仲良くなれていなかった。
姫様はスタスタと自分の部屋へと帰った。
「んんん、どうやったら心開いてくれるんだろう。」
半泣きになりながらも自分の仕事をこなしていく笑梨香ちゃん。もちろん、何回か転んでいる。
「あいててて…。」
転んでしまった笑梨香ちゃんはソファの下に何かあるのが見えた。そこにあったのは日記だった。
『私の日記』と記されている。
…おそらく姫様の日記だろう。それを笑梨香ちゃんが開こうとした瞬間、
「ダメ!!返して!」
姫様が咄嗟に大声を出してすぐさま日記を笑梨香ちゃんから取り上げた。
「あ、ごめんね、つい、落ちてて。」
その言葉を聞いた姫様はゆっくり玄関の方へと向かう。
「姫様、どこ行くの??」
「いいじゃん!どこでも!」
そう言って扉を思い切り開けて閉めて出ていった。それを笑梨香ちゃんは意味深な顔をして見ていた。
「…嫌な…。」
そう一言呟いてから笑梨香ちゃんは自室へ戻った。
その頃、姫様は傘を差しながら外へ出かけていた。
「はぁーぁ。雨さんもたくさん降ってて大変だね〜。」
お空に向かって話す姫様はとても悲しそうな顔をしている。
「ナイトも最近、遊んでくれって頼んでもうんって返事するのに遊んでくれないし、まだあのメイドさんとも、なんかよく分かんないけど仲良くなれてないし。」
段々と姫様の悩みが雨の中にかき消されていく。そして雨はまだ降り続く。止む気配はない。
「公園で遊ぼかなっ!」
そして公園に入るけど、遊具がびしょ濡れで全く遊べるような状況じゃない。
「…もう!雨さん嫌い!なんで降ってるの!」
そう叫んだが、それに反発するかのように雨が余計に強くなり始める。
「うるさいうるさい!!雨さんのばーか!!」
そう言い放ってダッシュで公演を飛び出した。
その瞬間、姫様の目の前にトラックが猛スピードで突っ込んできた。
「危ない!」
姫様を危機一髪のところで私服の笑梨香ちゃんが飛び込んで助けた。
「…あ、ありがとう。」
笑梨香ちゃんがしっかりと姫様を抱き抱えて
「もう、心配したんだからね、姫様…!もうどこにも一人で行っちゃダメだよ。」
「…うん。」
笑梨香ちゃんは姫様が出ていったあと、嫌な予感を察知して自室に戻ってメイド服を着替えて私服で姫様を追いかけたんだ。
「姫様のこと大好きだから、これからは私と一緒に行ってくれる?」
「…いなくならない?」
下を俯いて姫様が小さく呟いた。
「え?」
「絶対、いなくならないならいいよ。」
そう言った姫様の目には涙が浮かべられていた。
「当たり前じゃない!私は姫様のメイドなんだからね!」
こうして姫様とメイドの二人の絆は深くなった。これは、僕の知らない物語。