第七話「ドジっ子メイドさん!」
6月27日。晴れ。
今日の朝は呼び鈴が鳴って目覚めた。
「誰だ?んー、はい。」
扉を開けると可愛らしい女の人がそこにいた。
「あ、あの、はじめまして。今日からメイドとして来ました!よろしくお願いします!」
「あー!君か。よろしくね。」
そう、僕はついにやることが多すぎてやるのも面倒になり、メイドを雇うことにした。もちろん、経費で。
「ん?ナイト、この人、誰?」
「あー、起きた?この人は今日からメイドとして来た…。」
「笹西笑梨香と言います!よろしくお願いします!」
僕と姫様に加えて新しく笑梨香ちゃんが入ることになった。
「じゃあ、早速で悪いんだけど…掃除…頼める?」
「はい!もちろんです!では失礼しま…」
笑梨香ちゃんが入ろうとした瞬間、ズデンと小さな段差につまづいて転んでしまった。
「…だ、大丈夫?!」
「…ねぇ、ナイト…。こんな子がメイドで大丈夫なの…?」
大丈夫だよと言いたいところだけどなんか嫌な予感が背筋に走った。
「いたたぁ…、すみません!私…。」
笑梨香ちゃんが必死に謝る中、僕は大丈夫大丈夫と言って慰めた。
そしてそのあとに掃除を開始したんだけど…。
「ぅっ!」
しっかりと転倒。それも合計で7回。
「…じ、じゃあ、今度は料理お願いできるかな?」
「は、はい、任せてください!」
袖をぐっとしっかりと巻いて真剣な顔になり冷蔵庫からあらゆる物を取り出す。
「…大丈夫かな。」
「流石に女の子だからナイトよりは料理はマシだろうけどね。」
「それはそうだろうけど。って、それ、フラグっていうやつでしょ。」
僕と姫様はソファからじっと笑梨香ちゃんの真剣な顔を見つめる。
本当に熱心に取り組んでいる笑梨香ちゃんの姿は可愛かった。
別に恋愛としてでは無いけど普通に可愛かった。
「できましたぁ!!」
しばらくしてから出来上がった料理を僕と姫様の前へと出した。
「どうぞ、お召し上がり下さいっ!」
蓋を取るとそこには大きな大きなオムライスが乗っかっていた。
「おいしそぉ!」
「おー。うまそう。」
姫様と僕の反応の差は今は置いといて、食べてみる。
「…!」
「…?!」
「…?」
「うまーーい!!!!!!!」
僕と姫様は同時に叫んでしまった。そう、だって死ぬほど美味しかったからだ。
まさかここまで綺麗に、そして美味しく作れるとは思ってなかった。失礼すぎるけど。
「良かったです、お口にあって。」
嬉しそうな僕と姫様を見て笑梨香ちゃんも笑みが零れる。
意外とドジっ子なのにこういうところで素晴らしい能力を持っていて安心している。
笑梨香ちゃんの料理は一流シェフよりも美味しいかもしれない。それほどまでに美味しい。
ん?でも、これだったら専門シェフになればいいのでは…。とふと思った。
そして洗濯も何もかもすべてこなしてくれた。
まぁ、転んだ回数は数十回あったけど。
深夜になる手前。
「じゃあ、僕は帰るけど、笑梨香ちゃんは姫様を寝かしてあげてね。」
「あ、はい!もちろんですよ!」
「早く帰ってよナイト。」
「なんだよー、その言い方。まぁ、また明日な、おやすみ。」
家に帰宅後のこと。笑梨香ちゃんと姫様は一緒に寝ていた。
しばらくして笑梨香ちゃんが静かに立ち上がった。
「ふぅー。」
そして笑梨香ちゃんはリビングへ向かって何かをやり始めた。
次の日…。
「おはよう〜。」
僕が到着すると誰も出てこなかった。
「ま、7時だもんな…。そりゃまだ寝てるか。ん?」
リビングへの扉を開けるとそこには、大量のノートや電卓、筆記具が机に散らばったところで寝ている笑梨香ちゃんが寝ていた。
「…もしかしたら、最高のメイドが来たのかもな。」
心が静かに嬉しくなった。