第六話「私がヒーロー!」
6月24日。晴れ。
「ふぅ、洗濯物多かったな…。…次は掃除か。はぁ。やること多くて疲れるなぁ、やっぱり。」
僕は日に日にやつれていく気がする。こんなにやってるといつかバテる気がする。
「ねぇねぇ!私ね、実は正義のヒーローなんだー!」
「はぁ…。そうなの。」
「ちぃがう!もっと驚いてよ!」
姫様のワガママは至る所にある。もちろん、アニメなんか見てしまえばそれを現実にしようとするほど。
「正義のヒーローは自分で正義のヒーローなんて言わないよ〜。」
「むっ。」
少し僕を睨みつけてから姫様は
「もういいもん!パトロール行ってくるもん!」
「行ってらっしゃい〜。」
クタクタだった僕はソファにへたりこみ、スマホをいじる。
「メイドさんとか雇っちゃうか〜。まぁ、いいよね、僕は執事だからメイドさんくらい…。」
その頃、姫様はパトロールに来ていた。
「何か問題ないかな?困ってる人とか〜。」
当たりをキョロキョロと見回してると
「うえぇん!」
何やら泣いている声が近くから聞こえた。さくら公園からだ。
大きな木の下で泣いてる小さな男の子がいた。
「正義のヒーロー登場!泣いてるけどどうしたの?」
すぐさま姫様が駆け寄って助けを聞く。
「風船が引っかかっちゃったの。」
上を見上げると確かに左側の木にヒモの着いた風船があった。
「待っててね、今取ってきてあげるから。」
そう言って木を登ろうとした時、自分の下がスカートだったことに気づいた。
「あ。えっと…。」
「フハハハハ!そこの子どもたち!困ってることがありそうだね!」
困っているとそこに仮面のヒーローが現れた!
「あ、ヒーロー、チルド・レン!」
男の子が叫んで言った。
「お、俺の事を知っているのか!面白い!」
「チルド・レン…。本物…。」
「お嬢ちゃん、勢いはいい。そしてマントもその頭に着けてる仮面の髪留めもいい。だがしかし!それだけではヒーローはつとまらん!とぅ!!」
そう言って飛び上がり木に引っかかっていた風船を取って降りてくる。
「はい、これどうぞ。」
「わぁ!ありがとう!!」
男の子は嬉しそうに走って行ってしまった。
「…いいだろう、ではお嬢ちゃん、君にヒーローというのは何かを教えてあげよう!」
「…はい!」
ということでチルド・レンについて行くことにした。
最初に訪れたのは火事の場所だった。
「まだ息子が中にいるんです!お願いです!入れてください…!」
何やらお母さんらしき人が消防隊の人に寄りかかっている。
「よし、じゃあ初歩の初歩だ。あの火事の中から男の子を助け出すんだ。」
「え?!…えぇ…。」
上を見るとかなりの勢いで燃え盛っている。こんなのは小学生が入ったらすぐに燃えてしまうだろう。
「さぁ、俺は先に入ってるぞ!とぅ!!」
チルド・レンは先にドアから中に入っていってしまった。
「…どうしよう。」
しばらく迷っているとチルド・レンが窓を割って顔を出した。
「まずいな…!これ以上は戻れない!ここから飛ぶしかない!!俺は飛べるんだ!!飛んだことないけど!」
「嫌だよ!誰だよ!お前!こんなとこで死にたくないよ!」
男の子が嫌そうにチルド・レンを叩いている。
「お願い!本当のヒーローがいるなら助けて…!!」
男の子がチルド・レンを叩きながら空に向かってお願いしていた。
「…一か八か…!」
そう言って姫様はどこかに電話をした。
「飛ぶぞー!さーん!にいー!いーち!とぅ!!」
チルド・レンが窓から飛び降りたその時、不意にヘリがチルド・レンと男の子をかっさらった。
「良かった、間に合った!」
こうして姫様はヒーローになり皆からチヤホヤされました。
…という夢を自分の部屋で見ていたのだった。
「姫様、笑ってるけど何の夢見てんだろ。」