第十話「アイス事件」
7月15日。晴れ。
「あつぅーい。」
昼過ぎの3時に姫様の大きな不満が家を包み込む。
「…あつぅーいーっ!」
「うるさいな〜、冷房かかってるでしょーが。」
僕が姫様にムッとした顔で言う。
「それだけじゃー、暑いのー!」
「あ、そうだ、冷凍庫に確かアイスあったよ。」
「え!ほんと?!」
笑梨香ちゃんが姫様に微笑んでそう言って冷凍庫を開ける。
「…あれ。…無くなってる。」
その瞬間、家全体の時が止まった。まさに、嵐の前の静けさとはこの事だろうと思えるほどに。
「ナイトでしょ!」
「いやいや、なんで俺なんだよ!」
「私食べてないもん!」
そう言われても僕は食べてないものは食べてない。
「じゃあ、何?笑梨香お姉ちゃんが食べたとでも言うの?!」
「いや、そういう訳じゃねぇけど。」
僕と姫様が延々と対決していると笑梨香ちゃんが止めに入った。
「まぁまぁ、でも、いつなくなったんだろう。今日の朝はあったんだけど。」
ということで、朝にこの部屋に来た順番を考えた。
まずは笑梨香ちゃん。姫様と一緒に寝ていて、先に起きてきてから朝食の準備。この時にはまだあった。
「笑梨香ちゃんは嘘つくはずがないし、これは本当だな。うん。」
そして、次に起きてきたのは…いや、姫様の家にやってきたのは僕。
言っても特に何か冷蔵庫方面に行くことも無く、ただずっとスケジュール確認やらをしていた。
「ナイト、ちゃんと仕事してんの?」
「してるよ!ただこの家のことに関しては笑梨香ちゃんが大半やってくれてるから姫様のことだけ管理してるよ。」
そのあとに起きてきたのが姫様。姫様はすぐさま冷蔵庫を開けて涼しんでいたらしい。
「やっぱ、その時に食べちゃったんじゃないの?」
「食べてないもん!」
「よーく、思い出してみたら?」
「んんん、、、、。」
昼過ぎのこと。
「あつぅぅい、ナイトー?あれ?笑梨香お姉ちゃーん。あれ?なんでいないの。」
僕はトイレに。笑梨香ちゃんは掃除をしに2階の姫様の部屋にいた。
「むぅ、涼しむかー。ん?冷蔵庫より冷凍庫の方が涼しいのかな。」
そして冷凍庫を開けた時、目にアイスが入った。
「あ、アイスー!いただきますっ、むしゃ。美味しかった!」
一口で全て食べた。そして食べた気がしないから忘れていた。
「あ。…そういえば…。」
と、いうことで犯人は姫様だった。
「なら、ナイト、新しいアイス買ってきてよ!」
「なんで僕が。嫌だよ。姫様が欲しいんでしょ?自分で買ってきなよ。」
そう言うと姫様は怒った様子で頬を膨らまして
「なんでなの!姫は家にいなきゃダメなのー!」
「何、その理論。」
「じゃあ、私が行ってきましょうか?」
ひっそりと笑梨香ちゃんが手を挙げて提案した。
「ダメ!笑梨香お姉ちゃんも家にいなきゃダメ!」
「だからなんだよ、その理論は…!」
「ナイト、ほら、早く!」
そう姫様から急かされていると突然、呼び鈴が鳴り響いた。
「…誰だろ。はーい。」
僕が二人から離れて出ていくと、宅配便のお兄さんがいた。
「お届け物でーす。ここにハンコかサインお願いしまーす。」
さらっとサインをして荷物を受け取る。
何の荷物なんだろうと思い、部屋へ持ち帰って開ける。
「なになに?」
興味深々に姫様が中を覗くとそこにはアイスがたくさん入っていた。
「えー!スゴーイ!」
いろんな種類のアイスが箱で入っている。
誰からの荷物だろうと思い、見てみると僕の実家だった。
もちろん、姫様たちのことは話したけど、まさかここまでするとは…。と思いつつも感謝はした。
「やっぱり、夏はアイスだよね!」
満面の笑みでアイスを食べた姫様は喜んでいた。