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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅲ  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンと足のない乙女
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7 一人でも行く

それに対して華子は、まだ興奮冷めやらぬ様子で立ち上がり、

紳士クンに顔を近づけて言った。

 「だからこそ!私達オカルト研究会は夜の教会に忍び込み、

事の真相を確かめなければならないのです!」

 「な、なるほど・・・・・・」

 華子の迫力に圧倒され、紳士クンはたじろぎながらそう返す。

すると華子は一転して力なくため息をつき、椅子に座りこんでつぶやいた。

 「ですが、乙子さんの体調がすぐれないのであれば、

無理にお誘いする訳にはいきませんね。

非常に不本意ではありますが、笑美さんと二人で教会に忍び込む事にします・・・・・・」

 すると傍らの笑美は右手を横に振ってこう返す。

 「ウチも今日は無理やで?

お父ちゃんの会社の取引先の、社交パーティーに行かなあかんから」

 「なっ⁉あなたはオカルト研究会の会員でありながら、私用を優先するのですか⁉」

 「当たり前やんか。

それにウチ、そもそもオカルト研究会に入会した覚えはないし」

 「わ、わかりましたよ!私一人で行きますよ!

どうせ誰も幽霊なんか信じちゃいないんだから!」

 すっかり機嫌が悪くなった華子は、頬を目一杯膨らませてそっぽを向いてしまった。

その華子に、笑美は困った顔で頭をかきながら言葉を続ける。

 「そりゃあ幽霊がこの世に居る訳ないやろ?

それに夜の教会に忍び込んだ事が先生にバレでもしたら、

下手したら停学処分になるかもしれへんねんで?

旧校舎に忍び込んだ時だって副会長さんにバレて、怖い思いをしたやろ?」

 「そんな事で私のオカルト魂を止められるとお思いですか⁉」

 「知らんがな!とにかくあんまりアホな事はしなやって言うてんねん!」

 「アホとは何ですか!」

 「アホな事を言うてるからアホって言うんや!」

 そういって互いに睨みあう笑美と華子。

そんな二人の間に居る紳士クンは苦笑いを浮かべながら

「まあまあ、二人とも落ち着いて」

と二人をなだめ、華子の方に向き直ってこう言った。

 「ぼ、僕、体調は大丈夫だから、今夜華子さんに付き合うよ。

だから落ち着いて、ね?」

 「ほ、本当ですか⁉」

 紳士クンの言葉を聞き、一転して顔をほころばせる華子。

 「無理に付き合わんでええんやで乙子ちゃん?

どうせロクな事になれへんのやから」

 諭すような口調で笑美は紳士クンに言ったが、紳士クンを味方にし、

すっかり上機嫌になった華子は余裕の表情で笑美にこう返す。

 「ロクな事にならない事はありません。

私と乙子さんは今夜、人類の未知なる存在と遭遇するのです!」

 胸を張って仁王立ちで声高らかに宣言する華子に、

笑美は大きなため息をつき、それ以上は何も言わなかった。

果たして紳士クンと華子は、人類の未知なる存在と遭遇する事ができるのだろうか?



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