6 教会の噂話
「実はこの学園の教会は、深夜になると幽霊が出るらしいんですよ・・・・・・」
「また幽霊かいな?この前旧校舎に行った時も、幽霊なんか居らんかったやないか」
「居ましたよ!ただ私達の目では確認できなかっただけです!
笑美さんだって、あの時何かが居る気配を感じたでしょう⁉」
「う、まあ、何か居ったような気はしたけど、
それが幽霊やっていう証拠は何処にもないやんか」
「ですが幽霊じゃないという証拠も何処にもありません!」
ちなみにその時の幽霊の正体は、
旧校舎の図書室に忍び込んでいた静香だったのだが、
それを言うと話がややこしくなりそうなので、紳士クンは黙っている事にした。
その代わり、華子をなだめるような口調で口を挟んだ。
「まあまあ、あの時の幽霊の正体はともかく、
教会にも幽霊って出るものなんだね。
ああいう神聖な場所には、そういうモノは近付けないのかと思ってたけど」
すると華子は長い前髪に隠れる瞳をキランと輝かせ、
ここぞとばかりに語りだした。
「そうなんです。悪霊の類であれば、教会には近付く事すらできないでしょう。
私が思うに、教会に居るのは神様がこの世に遣わせた精霊じゃないかと思うんです。
もしくはこの学園に古くから住む土地の守り神?
この学園の七不思議によると、昔恋に破れた傷心の乙女が、
そのあまりに深い悲しみの為、
教会で神様にお祈りを捧げたまま命絶えたという話もありますし、
昔あの教会でミサが行われている最中、気の狂った大男が侵入し、
ミサに参加していた女子生徒の一人をナイフで刺し殺し、
その魂が今も教会をさまよっているとかいう話もあります。
更には昔あの教会では密かに悪魔召喚の秘密の儀式が行われていて、
悪魔の召喚に成功した女子生徒がその悪魔に魂を奪われてしまい、
その悪魔は今も教会に住みついているという話もあります!
あと、こんな話も――――――」
「あーはいはいわかったわかった。
とにかくあの教会には、幽霊が出そうな噂がワンサカあるっちゅう事やな?」
このままでは昼休みが終わっても華子の話が終わりそうもないので、
笑美が右手をヒラヒラ振って制した。




