2 女子より女子力高め
エシオニア学園女子部の制服は、
白を基調にしたセーラーカラーのワンピースに、首元に青いスカーフ。
全体的にシンプルだが、清廉と純潔をかもしだしたデザインになっており、
それが紳士クンを見事な女学生に仕立て上げている。
するとそこに、ノックしたドアを開け、
紳士クンと同じエシオニア学園の制服に身を包んだ姉の撫子が顔をのぞかせた。
背格好も顔立ちも紳士クンとそっくりで、ショートボブの同じ髪型。
しいて違う点は目元で、
撫子は目じりがキリッと吊りあがって勇ましい印象があるのに対し、
紳士クンの目じりはややたれ気味で、
優しくておっとりした印象がある。
顔も性格も、どちらかと言うと撫子の方が男勝りなのだが、
弟の紳士クンをとても大事にしており、
男の身でありながら女子校に通う事になってしまった紳士クンを、
いつも心配している。
その撫子は、姿見とにらめっこしている紳士クンに声をかけた。
「紳士、じゃなくて乙子ちゃん、
(学校で紳士クンは、『乙子』という名の女の子という事になっている)
そろそろ学校へ行くわよ?」
それに対して紳士クンは前髪を右手でいじくりまわしながらこう返す。
「お姉ちゃん、僕、前髪変じゃない?
それに変な所に無駄毛が生えてたりしない?
僕が男だってバレたら大変な事になっちゃうから・・・・・・」
そんな紳士クンの姿を頭のてっぺんからあしのつま先まで眺めた撫子は、
ひとつ息をつき、シミジミとこう言った。
「大丈夫よ、今のあんたは誰が見ても立派な女の子だもの。
ていうか、今通っている学校でも、
身だしなみにそこまで気をつけている女子は少ないと思うわよ?」
そう、今や紳士クンは、
誰が見ても男とは気づかれないほどの女子力を備えていた。
顔はもちろん、腕や足の無駄毛は丁寧に処理し、
髪はキチンと整え、制服も一糸乱れず着こなしている。
女子校という所は、周りに同性しか居ない為、
えてしてこういった部分が(とてつもなく)なおざり(、、、、)になるものだが、
その中で紳士クンは、本家の女子顔負けの女子力を身に着けていた。
そんな紳士クンの姿を見て、撫子は頼もしいやら不安やら、
何とも複雑な想いに見舞われるのだった。
そして心の中で、こう問いかけずにはいられないのだった。
(紳士、あんたは一体、何処へ行ってしまうの?)