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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅲ  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンと足のない乙女
89/110

1 カップル以上に見つめ合う二人

 じぃ~っ・・・・・・。

 ある日の放課後。

人気(ひとけ)のない学園の裏庭のベンチで、紳士クンは隣に座る(あな)田野(たの)水落(みら)()に、

一直線に見つめられていた。

そしてそんな水落衣の視線から一切目をそらす事なく、

紳士クンも水落衣のその透き通る宝石のような瞳を見つめ返す。

 ちなみにこれは、

愛し合う二人が互いの愛情を深める為に見つめ合っているのではなく、

紳士クンが水落衣の力をコントロールする為の練習に付き合っているのだった。

この練習を始めてからかれこれ一週間。

最初のうちは紳士クンと目を合わせる事をためらっていた水落衣だが、

日を追うごとにそれにも慣れて、今ではためらう事なく、

むしろ積極的に紳士クンの目を見つめられるようになっていた。

こうなると逆に紳士クンの方が水落衣に見詰められる事に、

えもいわれぬ気恥かしさを感じるようになり、

少しでも目をそらそうものなら、

 「ダメですよ、ちゃんと私の目を見てください」

 と、水落衣にたしなめられるような有様になっていた。

が、紳士クンも女の子の(なり)をしているとはいえ、

将来立派なジェントルメンを目指す(れっき)とした男である。

そんな紳士クンが香子に劣らぬ美しい顔立ちの水落衣に澄んだ瞳を向けられれば、

目をそらさず、心穏やかに居る事は至難の業だった。

胸の中は早鐘(はやがね)のごとく高鳴り、顔が真っ赤にほてっているのが自分でもわかった。

そして頭の中はますます熱を帯び、今にも噴火する火山のような状態だった。

呼吸は乱れ、掌には滴るほどの手汗がにじんでいる。

 そんな極限状態にまで追い詰められた時、

水落衣がフッと紳士クンから目をそらして言った。



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