13 凄い能力は、使う人の心が大事
そう考えた紳士クンは、
枯れた土にゆっくりと水を染み込ませるような口調で言った。
「僕は、水落衣さんの生まれ持った力が悪いモノだなんて全然思わないよ?
それにその力を水落衣さんに与えてくださったのは、他ならぬ神様じゃない?
なら、それには必ず何かしらの意味があるんだよ。
水落衣さんがその能力を持って、この世に生まれて来た意味が」
「意味なんか、あるはずないですよ」
「ううん、きっとあるよ。
だってもし、他のずるがしこい心を持った人が水落衣さんの力を持ったとしたら、
それこそ悪い事ばかりに使うと思うんだ。
だけど水落衣さんはそうは考えないで、むしろこの力がない方が、
周りの人に迷惑をかけないで済むと思っている。
だからこそ神様は、水落衣さんにその能力を与えてくださったんだよ。
この能力を悪い事に使わない水落衣さんが、
それを活かして、周りの人の役に立つ為に」
「私の能力が、周りの人の役に、立つ?」
水落衣は思わず紳士クンに方に振り向いてそう言った。
そしてそんな水落衣に紳士クンはニッコリほほ笑んで頷き、こう続ける。
「そうだよ。大切なのは力そのものじゃなくて、
それをどう使うかの、人の心なんだよ。
ダイナマイトだって本来は人を傷つける為に発明されたんじゃなくて、
建物を解体するために発明されたんだ。
それを間違った使い方をしたから、怖い兵器みたいになっちゃったんだ。
だから水落衣さんの力も同じで、それをどう使うかの、
水落衣さんの心が大切なんだよ」
「私の、心が・・・・・・」
「うん。だから神様も、
きっと水落衣さんならその力を正しい事に使ってくれると思って、
水落衣さんにその力を託したんだと思うよ?
水落衣さんならきっと、その力で人の役に立つ事ができると思うな」
「そう、でしょうか?」
「うん!」
水落衣の弱々しい問いかけに、紳士クンは力強く頷く。
すると水落衣は薄い笑みを浮かべ、幾分明るい声色になって言った。
「私、自分の力をそういう風に言ってもらえたの、初めてです。
だけど・・・・・・」
と、一転して表情を曇らせ、沈んだ口調でこう続ける。
「人の目を見ると、自分が自分じゃないみたいになるし、
視たくない未来まで視てしまうし、それを無意識に口走ってしまうから、
これを人の役に立つようにするのは、やっぱり難しいと思います・・・・・・」




