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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅲ  作者: 椎家 友妻
第四話 紳士クンと二人の占い師 後編
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8 心当たりはなくもない

そんな紳士クンに、静香は抱えた本を本棚に戻しながら尋ねる。

 「ところで、今日は何かお探しの本があるんですか?」

 静香の言葉で本来の目的を思い出した紳士クンは

「あ」と頓狂な声を上げ、頭をポリポリかきながら言った。

 「いえ、今日は本じゃなくて、その、ある女の子を探しているんです」

 「お友達、ですか?」

 「いやあ、実は会った事もないんですが、その人のお姉さんに、

その人の相談に乗って欲しいとお願いされまして・・・・・・」

 「そうなんですか。

乙子さんはいつも誰かの人助けをしているような印象がありますね」

 「そ、そんな事ありませんよ。

ただ、気が付いたらいつもこういう事に巻き込まれちゃって・・・・・・」

 「悪い事ではないと思いますよ?

私もそれで乙子さんに色々お世話になっているんですから。

それで、その方はどんな方ですか?

特徴を教えていただければ、私も探すのをお手伝いしますよ?」

 「ありがとうございます。

ええと、顔は分からないんですが、やたらソワソワして人目を避けて、

挙動不審な女の子らしいんですけど、それだけじゃあ分かりませんよね?」

 紳士クンはそう言って苦笑いを浮かべたが、

本を全て棚に戻した静香は少し考え込むように黙り込み、

ハタと思いついたようにこう言った。

 「いえ、そういえばそういう方をさっき見かけました。

本を返しに来た時も私と目を一切合わせようとせず、

まあ、私も合わせようとしなかったんですが・・・・・・

それでその後、やけにコソコソと人目を避けるように、

図書館の奥へと消えていった女の子が居ました。

まるで学園での普段の私みたいだったので、印象に残っていたんです」

 「そ、そうなんですか。多分、その子が僕の探している子だと思います。

よければ一緒に探してもらえますか?」

 「はい、喜んで」

 そう言って微笑む静香に連れられ、

紳士クンは香子の妹である水落衣を探して図書館の中を歩き回った。

そして三階フロアの一番奥の本棚へさしかかったところで、静香は足を止めて言った。

 「あ、あの方がそうですよ」

 静香がそう言った目線の先に、小柄な女子生徒が一人立って、

開いた本に視線を落としている。

顔立ちは確かに香子によく似ていて、

緑がかった黒髪を頭の左でまとめている左肩にたらしている香子に対し、

そこに居る彼女はそれをみつあみにしている。

長身の香子に比べて背丈は頭ひとつくらい小さく、

堂々たる物腰の香子と違い、彼女はどこか不安げで大人しそうな雰囲気が漂っていた。

 「うん、多分、僕の探している人で間違いないと思います」

 紳士クンが頷きながらそう言うと、静香は早口で、

 「そうですか、お役に立ててよかったです。それでは私はこれで」

 と言い、そそくさと踵を返して去って行った。

 (静香さん、やっぱり女の子は苦手なんだな)

 静香の後姿を眺めながら紳士クンは苦笑し、目の前の少女に目を向ける。

 (い、いきなり声をかけていいのかな?

きっと凄くびっくりするだろうし、本当に逃げられたらどうしよう?

そしたら追いかけた方がいいのかな?)

 頭の中で色々と葛藤した紳士クンだが、

とにかく行動しようと腹をくくり、目の前の少女に声をかけた。



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