3 真子は割といい子
そんな二人のやり取りを傍らで眺めていた真子は、
頭をかきながらたしなめるような口調で尚に言った。
「ちょっと尚、そんなに親しくない人(、、、、、、、、、、)に、
あんまりずうずうしいお願いをするもんじゃないわよ。
蓋垣さん困ってるじゃないの」
そして再びチクリとした視線を紳士クンに投げかける。
(や、やっぱり剛木さんは、
あまり僕の事をよく思っていないのかもしれない・・・・・・)
真子の視線を敏感に察した紳士クンだが、
そんな事は露も知らない様子で尚は真子に言い返す。
「あら、私は純粋に乙子さんや静香お姉様と仲良くなりたいだけよ?
それがずうずうしいお願いだなんて思わないわ」
「だけど、それでまたあんたが傷つく事になるんじゃないかって心配してるのよ。
表面上は仲直りしたとはいえ、
私、静香お姉様の事を完全に信用した訳じゃないからね。
もちろん、そこに居る蓋垣さんの事もね」
(う、や、やっぱりそうだったんだ・・・・・・)
予感が的中して苦笑いする事しかできない紳士クンだったが、
尚は真子の方に向き直り、力強い口調で言った。
「傷つく事を恐れていたら、真の友情は手に入らないわ。
最初は涙を流すほど傷つく事があったとしても、
それを乗り越えた所に、本当の友情が芽生えるのだと私は思うの。
それに真子だって出会って間もない頃は私につれない態度ばかりとっていたけど、
今では一番の親友になってくれたじゃないの」
「なっ⁉そういう恥ずかしい事を堂々と言うんじゃないわよ!」
尚の言葉に真子はゆでダコのように顔を真っ赤にし、
今にも頭から湯気が立ち上りそうな勢いだった。
そんな真子を愉快そうな目で眺めながら、尚は紳士クンに耳打ちする。
「ごめんなさいね乙子さん。
真子は気が強くて意地悪な事ばかり言うけれど、
本当は友達思いのとても優しい子なの。
だから真子とも仲良くしていただけると、私とても嬉しいわ」
「ちょっとちょっと⁉何勝手な事言ってんのよ⁉
私は別に新しく友達を増やそうなんて思ってないんだから!
その、あんたさえ居れば・・・・・・」
そう言って口ごもる真子。
(剛木さんって、表向きはとっつきにくい感じだけど、
中身は友達思いのいい人なのかも。
僕や静香さんをよく思っていないのも、
尚さんが他の人と仲良くする事に、
ちょっぴりヤキモチを焼いているだけなのかもしれな)
そう思うと、紳士クンは真子にいくらかの親近感が湧くと同時に、
無邪気に静香と尚を仲良くさせるのもいかがなものかと、
少し複雑な気持ちになった。
そんな中真子は、自分の恥ずかしい気持ちを吹き飛ばすように、
強い口調で紳士クンに言った。
「そ、それよりも!蓋垣さんは何の用事でここに来たの⁉
まさか尚に会いに来たって訳じゃあないんでしょう?」
「ええっ⁉違うんですか⁉」
残念そうな声を上げる尚に申し訳ない気持ちになりながら、
紳士クンはおずおずと言った。




