7 両手におチチ
「ふざけんな!そんな毛まみれの胸のどこがいいってんだよ⁉
俺の胸の方がいいに決まってるだろうが!」
そして紳士クンの空いた左手を取り、自分の胸に押し当てる。
ムニュゥッ。
「わああああああっ⁉」
もはや大々々パニックの紳士クン。
今ならゾンビの集団に追いかけられても、こんな悲鳴は上げないだろう。
そんな中伴兆太郎と令太は、更に紳士クンに詰め寄って来る。
「どうだ紳士!俺の胸の方がいいだろ⁉ほれ!ほれ!」
「そんな事ねぇよな⁉お前は俺の胸の方がいいよな⁉な⁉」
それに対して紳士クンは、文字通り精魂尽き果て、どんどん意識が遠のいて行く。
そしてそのまま・・・・・・・。
パチッ。
目を、さました。
そう、今までのあれは、夢だったのだ。
「はぁ、はぁ、ゆ、夢?」
咄嗟に上半身を起こし、辺りを見回す紳士クン。
そこは夕べ床に就いた、間違いなく紳士クンの部屋だった。
「よ、よかったぁ・・・・・・」
心の底から漏れ出た言葉を呟き、紳士クンは両手で顔を覆った。
それほどにさっきの夢はリアルで、令太や伴兆太郎の声や胸の感触が、
紳士クンの五感にしっかりと刻まれていた。
(ま、まさか、正夢じゃないよね?)
神様にすがるように紳士クンは思ったが、
しかしあえてここで作者はこう記すのだ。
それは、わからない。
まあとにかくそんな感じで、
今日も紳士クンの割と不本意な日々が始まるのであった。
「はぁ・・・・・・・」




