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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅲ  作者: 椎家 友妻
第三話 紳士クンと二人の占い師 
59/110

9 館の中はインチキ臭い

そしてその後に紳士クンも続く。

 部屋の中は資料室よりもさらに狭く、壁も窓も黒っぽい布で覆われ、

昼にもかかわらず真夜中のように暗い。

その部屋の中央に二人が何とか並んで座れる程度の机が置いてあり、

その上にインチキくさい水晶球と、一本のろうそくがある。

そのろうそくはよく見ると本物ではなくろうそくの形をした電気スタンドで、

そのスタンドの弱々しい明りが、真っ暗な部屋にかすかな視界を作り出していた。

 館の主らしい女子生徒はその机の向こう側の椅子に腰かけ、

妖しい笑みを浮かべて口を開いた。

 「我が占いの館へようこそ。私がこの館の主である、三年の(あな)田野(たの)香子(かこ)よ。

あなたの過去も未来も丸裸・・・・

いいえ、全て見通して、あなたの幸せな未来を教えてあげるわ」

 (な、何か、占ってもらう前から不安になってきた・・・・・・)

 孔田野香子の放つ妖しい、というかウサン臭い雰囲気に、

紳士クンの心は早くも不安で一杯になっていた。

そんな中撫子は香子の正面の椅子に腰かけ、紳士クンも撫子の隣の椅子に並んで腰かけた。

 香子は撫子と紳士クンの顔を交互に見て言った。

 「あら、誰かと思えば蓋垣さん姉妹じゃないの。

この学園でのちょっとした有名人のあなた達に来てもらえるなんて光栄だわ」

 (え、ぼ、僕達、そんなに有名人なの?)

 香子の言葉に紳士クンは目を丸くしたが、傍らの撫子は事もなげに言った。

 「有名だなんてとんでもない。私達はどこにでも居るただの一般生徒ですよ」

 「そんな謙遜しなくてもいいのに。

まあいいわ、前置きはこのくらいにして、

どちらから占って差し上げればいいかしら?」

 香子の問いかけに撫子が

「私からお願いします」と答え、

いぶかしむような目つきで香子を見据えて言った。

 「それにしても、この水晶と言いろうそくといい、

随分インチキ臭い雰囲気がただよっていますね」

 「あらそう?まあ間に合わせだから、そう思われてもしかたないわね」

 特に気に障った様子もなくそう返す香子に、撫子はこう続ける。



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