5 身も蓋も無いアドバイス
その日の昼休み。
教室で笑美や華子と一緒にお弁当を食べ終えた紳士クンは、席を立って言った。
「あの、今から僕、ちょっと行く所があるから」
「どこ行くのん?いつもの図書館?」
笑美の問いかけに紳士クンは首を横に振り、
夕べ撫子にもらった占いの館のチラシを取りだしてこう返す。
「この学園に、よく当たるって有名な占いの館があるらしくて、
一緒に行こうってお姉ちゃんに誘われたんだよ」
するとそれを聞いた華子は、紳士クンが持ったチラシをマジマジと眺め、
いぶかしげな口調で口を開いた。
「ああ、確かに有名みたいですね。
でもここの占い、その人の過去や人間性はバッチリ言いあてる割に、
それに対する対処法とか、将来のアドバイスは結構いい加減らしいですよ?」
「そ、そうなんだ。華子さんも、その占いの館で占ってもらった事あるの?」
紳士クンが尋ねると、華子は眉間にしわを寄せてこう言った。
「ええ、ありますよ。
『あなたは霊的な事ばかりじゃなくて、もっと現実的な事にも目を向けた方がいい』
とアドバイスされました・・・・・・」
「あっはははははっ!まさにその通りやんか!
そのアドバイスはちゃんと聞いた方がええで!」
華子の言葉を聞いた笑美がお腹を抱えて笑うと、
華子はそんな笑美をキッと睨んで言い返す。
「ほっといて下さい!
それに笑美さんだって一人でこっそりあの館に行っていたのを、
私知ってるんですよ?」
「うっ・・・・・・み、見てたんかいな・・・・・・」
バツが悪そうに目を泳がせる笑美に、紳士クンは遠慮がちに尋ねる。
「え、笑美さんはその時何て言われたの?」
「う・・・・・
『あなたはもう少しその姦しい所を慎めば、
素敵な恋にめぐりあえるでしょう』
って言われた・・・・・・」
「ププププーッ!
あなたも見事に言いあてられているじゃありませんか!
そのアドバイスは今すぐにでも実行するべきです!」
華子が右手で口元を覆ってそう言うと、笑美は顔を真っ赤にしてうつむいた。
するとそのやりとりを傍らで聞いていた、クラス委員長の日都好子が話に入って来た。
「わ、私もその館で、占ってもらった事があります!」
「へぇ、日都さんも占ってもらった事があるんだ。
その時はどんなアドバイスをしてもらったの?」
紳士クンの問いかけに、日都好子は意気消沈した表情でこう呟いた。
「私は、
『人の顔色ばかり気にして、
素直な自分を出さずに居ると、老け込むのも早いわよ』
って言われました・・・・・・」
「わははは!委員長さんはホンマにお人よしで気ぃ遣いやもんなぁ!」
「そういう方が居てくださるのはとてもありがたいですけど、
美容にはよくないかもしれないですもんね」
日都好子の言葉に、笑美と華子が無邪気な笑い声を上げる。




