2 撫子の気苦労
静香とは、撫子と同じクラスで、紳士クンとも友達の迚摸静香の事である。
彼女は過去のトラウマで女の子と接するのが苦手だったが、
撫子のド直球なアタックで、それを少しだけ克服する事ができた。
実はエシオニア学園で紳士クンの正体が男だと知っている数少ない人物で、
よき理解者でもあるのだが、そんな彼女の事を、
紳士クンは友人として気にかけているのだ。
その問いかけに対し、撫子は
「そうね、以前よりはだいぶ明るくなったわよ」
と頷き、一転してげんなりした表情になってこう続けた。
「でも、静香さんの双子の、あの馬鹿兄貴がうっとうしくてしょうがないのよ。
こないだもキザな内容のラブレターを送りつけてきてね」
そう言って深いため息をつく撫子。
ちなみにその馬鹿兄貴とは、迚摸静香の双子の兄の、迚摸色雄の事である。
彼は数多の女子にモテモテのプレイボーイだったが、
以前撫子に投げ飛ばされた事がキッカケで、すっかり心を奪われ、
それ以来撫子の事を一途に想っているらしいのだ。
その事を心底嫌がっている事は、今の撫子の表情を見れば一目瞭然だった。
そんな撫子に、紳士クンは苦笑いしながら言った。
「静香さんのお兄さんは、お姉ちゃんにすっかり夢中なんだね」
「いい迷惑よ!私は静香さんとだけ仲良くできればそれでいいの。
あんなチャラチャラした軽い男と親しくなるなんてゴメンだわ!」
「そ、そうなんだ・・・・・・」
この話題は今後あまり触れないようにしようと紳士クンが思っていると、
撫子は一転して楽しげな表情になって言った。
「ね、それよりあんた、明日の昼休み空いてる?ちょっと私に付き合いなさいよ」
「え?特に予定はないけど、どこに行くの?」
紳士クンが目を丸くして尋ねると、
撫子は一枚の紙切れを紳士クンの前に差し出した。
それには『占いの館』と大きな字で書かれており、
その横に『あなたの未来、教えます』と添えられていた。
「占いの、館?エシオニア学園にそんなのがあるんだ」
紳士クンがその紙切れを眺めながら言うと、撫子は頷いてこう続けた。
「そうよ、しかも結構当たるって噂で、
私も一度行ってみたいと思っていたのよ。
あんたも色々悩みがあるだろうから、一度占ってもらったら?
何かいいアドバイスがもらえるかもしれなわよ?」
「う、うん・・・・・・」




