23 アカイミハジケタ
そんな令が見守る中、令太は自分を落ち着かせるように大きく深呼吸をして、
再び紳士クンの方に向き直った。
そして改めて目の前の紳士クンを見据える。
そんな令太に、紳士クンは左手を差し出して言った。
「令太クン、これからもお友達として、僕と仲良くしてね」
「うっ・・・・・・」
そのまぶしい笑顔と愛らしい声にたじろぐ令太。
その令太の頭は、完全にパニックに陥っていた。
(しっかりしろ俺!仲良くするってのは男同士としてだろ!
何も変な意味はねぇ!)
必死に自分にそう言い聞かせる令太。
そして自分も左手を差し出し、紳士クンと握手をかわそうとその手を近付ける。
そして互いの手が近づき、令太と紳士クンの指先がチョンと触れた。
するとその瞬間。
パチン。
令太の中で赤い実のような何かがはじけた。
そして次の瞬間。
「うぉおおおおっ!」
雄叫びにも近い声を上げ、
令太は踵を返して逃げるように駆け出していた。
「あっ⁉令太クン⁉」
やにわに走り去る令太に紳士クンは驚きの声を上げたが、
そのあまりの全力疾走に、後を追う事もできなかった。
そしてポツンと一人取り残された紳士クンは、さびしげな表情でうつむいた。
(令太クン、帰っちゃった。
やっぱり僕みたいな女男とは、仲良くしたくないのかな・・・・・・)
令太の行動をそう解釈した紳士クンは、
令太が逃げ出した本当の理由を知るよしもなく、
すっかり落ち込んでその場を後にした。
そして最後の最後で自分の企みが成功しなかった令は、
紳士クンとは違う理由で落ち込んだのだった。
今日のお出かけで、
紳士クンの中で令太に対する友情が確かに芽生えたが、
令太の中ではまた違う感情が、紳士クンに対して芽生えてしまった。
この二人が仲良くなるには、色んな意味で前途多難のようだった。




