5 草原の番長
野太く、いかつく、和太鼓のように胸の奥にズシンと響く声が聞こえた。
咄嗟にその声の方に振り向く紳士クン。
するとそこに、長身で肩幅が広く、筋肉ムキムキで強面の男が立っていた。
彼の名前は伴兆太郎。
そのいかつい容姿と腕っ節の強さから、
「番長」として恐れられている人物である。
ちなみに彼はホモで、紳士クンに恋をしており、
かつて紳士クンに何度か告白をしているが、あえなく玉砕。
が、番長の名に恥じない根性と根気を持ち合わせている伴兆太郎は、
そんな事で諦める事はなく、今も紳士クンの事を一途に想っているのであった。
その伴兆太郎は、両こぶしを怒りに震わせ、
まるで阿修羅のような険しい形相で紳士クンを見下ろしている。
そんな伴兆太郎に、紳士クンは動揺しながら尋ねた。
「ば、ば、伴君?ど、どうしてここに?」
それに対して伴兆太郎は、紳士クンの心を槍で突くような勢いで叫んだ。
「お前を俺のモノにする為に決まってるだろうが!」
「えぇっ⁉」
驚きの声を上げる紳士クン。
そんな紳士クンの、令太の胸に触れていた細い手首を乱暴に掴み、
強引に引っ張り上げ、紳士クンの華奢でなよやかな体躯を自分の胸元に抱きよせた。
「ちょ、伴君⁉」
更に動揺する紳士クンに、伴兆太郎は構わずこう続ける。
「蓋垣!俺はお前を愛している!俺のモノになれ!」
しかし紳士クンは激しく頭を横に振ってこう返す。
「ダメだよ!この前も言ったけど、僕達は男同士じゃないか!
それなのに恋人同士にはなれないよ!」
すると伴兆太郎は間髪入れずにこう言った。
「わかってるよ!だから俺は女になった!」
「へ?」
伴兆太郎の突飛な上にも突飛な言葉に、紳士クンは目を点にして言葉を失った。
そしてしばらくの思考停止の後、絞り出すようにこう尋ねた。
「お、女に、なったの?伴君が?」
「そうだ!」
力強く伴兆太郎は頷き、紳士クンの右手を取り、自分の胸に押し当てた。
すると、
ムニュウ・・・・・・。