21 紳士クンにズキュン
「お、おい、大丈夫、か?」
そのあまりに悲壮感漂う紳士クンの背中に、
さすがの令太も心配になって声をかける。
その令太の方に振り向いた紳士クンの顔は青ざめ、
まるで悪魔に魂を抜きとられた廃人のようになっていた。
そして震える声で令太に尋ねる。
「令太クン、僕、どうすればいいの?
男らしい男になりたいなんて言っておきながら、
こんな、中身まで女の子みたいになっちゃって、僕、僕・・・・・・」
「・・・・・・・」
そんな紳士クンを前に、令太は気のきいた言葉も浮かばないまま頭をかいた。
紳士クンが好んで、
女の子みたいな格好や振舞いをしているのではないという事はよく分かったが、
そのねじれた状況に、紳士クンがあまりに見事に適応してしまっている事が、
事態をよりねじれたものにしていた。
令太も紳士クンと置かれた立場は同じだが、
ここまで努力して女の子らしくなろうとした事はないし、
ここまで男らしくあろうと志した事もない。
そういう意味で紳士クンは令太よりも真剣に人生と向き合っているという事でもあり、
その点は、令太は紳士クンが自分よりも尊敬できると素直に思った。
なので令太は紳士クンの前にしゃがみ、その華奢な肩に手を置いてこう言った。
「まあ、今はうまくいってねぇかもしれねぇけどよ、
お前の心意気は立派で男らしいと思うよ。だからそんなにクヨクヨすんなよ」
「れ、令太クン・・・・・・」
令太の言葉に目を丸くする紳士クン。
そしてその言葉は紳士クンを大きく勇気づけたようで、
紳士クンはニッコリほほ笑んで令太に言った。
「ありがとう、令太クン。僕、令太クンとお友達になれて、本当によかった」
「うっ」
紳士クンの言葉と笑顔にズキュンと心を射抜かれた令太は、
右手で顔を覆って咄嗟に背を向けた。




