11 解読不能なメニュー表
個室に案内されると、令太にうながされ、
紳士クンは奥側の木製の椅子に腰かけた。
緊張のせいか、それともこの椅子独特の座り心地のせいか、
お尻が妙にフワフワした感じがした。
案内してくれた中年紳士は「では後ほど」と言って立ち去り、
部屋には令太と紳士クンの二人だけとなった。
(うぅ、やっぱり緊張するなぁ・・・・・・)
初めて来る高級なお店で、
まだ打ち解け切れていない令太と二人きりという状況に、
紳士クンはより一層緊張感が高まった。
そんな紳士クンの前に、令太が
「ほらよ、好きなモン頼んでいいからな」
と言ってメニューを差し出す。
「あ、ありがとう」
紳士クンはぎこちない手つきでそれを受け取り、メニュー表を開いて眺める。
するとそこに滑らかな筆記体で、
英語なのかフランス語なのか分からない言語がズラッと並んでいた。
(よ、読めない!仮に読めてもどんな料理なのか全然想像できないよ!)
解読不能なメニュー表を前に、更に顔から血の気が引いて行く紳士クン。
するとそんな紳士クンの顔色を見てとった令太が、
そのメニュー表をひょいと取り上げ、自分でパラパラとページをめくった。
「ま、俺の方でテキトーに頼むわ。
何か嫌いなやつとかアレルギーのある食べモンはあるか?」
「い、いや、特には、ないです・・・・・・」
「そっか」
令太はそう言って頷くとさっきの中年紳士を呼び出し、慣れた様子で注文していく。
その様子を紳士クンは、憧れにも近い眼差しで眺めていた。




