10 お連れ様はガールフレンド
そして令太の顔を見ると、親しみを込めた口調でこう続けた。
「おや、凄木のぼっちゃんではありませんか。日本へはいつ戻られたのです?」
「ついこの前だよ。
色々ゴタゴタがあって、結局こっちの学校に通う事になったんだ」
「左様でございますか」
などとなれた調子で言葉を交わす二人。
その令太の背中を眺めながら、紳士クンはまたまた令太に感心していた。
(令太クン、こんな高級そうなお店の常連なんだ。何だかカッコいいなぁ)
すると中年紳士は紳士クンの方に顔を向け、ニコッと微笑んで言った。
「今日は素敵なガールフレンドもご一緒なのですね。
ぼっちゃんもそういうお年頃になったのですなぁ」
「うっ・・・・・・」
その言葉に顔を引きつらせる紳士クン。
しかし令太は取り乱す様子もなくこう返した。
「ああ、まあそんな所だよ。それよりいつもの席、空いてる?」
「はい、ご案内いたします」
そう言って中年紳士は踵を返し、店の奥の方へ令太と紳士クンを案内した。
そんな中年紳士の後をついて行きながら、
傍らの令太に少し物言いたげな視線を送る紳士クン。
そしてその視線に気づいた令太は、声をひそめて紳士クンに耳打ちした。
「ここで下手に否定したら余計に話がややこしくなるだろ。
そうしょっちゅうここに来る訳じゃねぇんだから、適当に話をあわせときゃいいんだよ」
「そ、そっか・・・・・・」
(た、確かに、ここで本当の事をバラす必要はないよね)
そう思った紳士クンは令太の言葉に頷いた。




