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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅲ  作者: 椎家 友妻
第二話 紳士クンと令太クン
35/110

8 男同士で楽しもう

が、令太は咄嗟にそんな紳士クンの細くしなやかな右腕を掴んだ。

その手には令太も自覚しないほどの力が入り、

そんな凄い力で腕を掴まれた紳士クンはその場で立ち止まり、

おずおずと令太の方に振り向いた。

その紳士クンに、令太は目をそらしながら口を開いた。

 「と、とにかく落ち着けよ。事情は何となくわかったよ。

どうせウチの馬鹿姉貴に変な事を吹き込まれたんだろ?

悪いな、気まずい思いさせて」

 その言葉を聞いた紳士クンは視線を落とし、申し訳なさそうにこう返す。

 「ううん、僕の方こそ、何の疑いもなくこんな格好して来ちゃって、ゴメン。

こんな格好をした僕とお出かけするなんて、嫌、だよね?」

 「嫌じゃねぇよ!」

 令太は反射的に叫んだ。

そしてその言葉にこんなにも力を込めてしまった事に、自分自身でも驚いた。

そしてそれを打ち消すように、声の調子を抑えて続けた。

 「いや、あの、別に嫌じゃねぇし、変でもねぇから。

今日は、その格好で、構わねぇよ・・・・・・」

 「れ、令太クン・・・・・・」

 令太の言葉にジーンとする紳士クン。

それは令太の気遣いと優しさだと解釈したからだが、

令太の気持ちはまた少し違うものであるとは、紳士クンは知る由もなかった。

ともかく気を取り直した紳士クンは令太の方に向き直り、力強い口調で言った。

 「ありがとう!今日は一日楽しもうね!男同士(、、、)で!」

 「お、おう・・・・・・」

 紳士クンの言葉は一国の大統領が

『これは正義の戦争だ!』

と言うのと同じくらい説得力に欠けるものだったが、

そこを突っ込む勇気は今の令太にはなかった。

そして再び訪れる気まずい沈黙。

それを打ち破ったのは、


 ぐぅ~・・・・・・。


 紳士クンのお腹の、切ない叫びだった。

 「あわわっ⁉ご、ゴメンね⁉

今朝は緊張して朝ごはんが食べられなかったから、

今更お腹が空いてきちゃって、その・・・・・・」

 再び取り乱す紳士クン。

そんな紳士クンを見て令太はフッと笑い、踵を返して紳士クンに言った。

 「じゃあとりあえずメシに行くか。

その格好じゃあ、あんまり人目につかない方がいいだろ?」

 「う、うん、その方が、助かる・・・・・・」

 紳士クンがそう言っておずおずと頷くと、令太は

 「じゃあ、ついてきな」

 と言い、スタスタと歩きだした。

 (サッと決断してスッと行動に移す。お、男らしい!)

 令太の後姿にそんな男らしさを感じ、感服する紳士クンであった。



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