3 撫子の叫び
(私が前に同じ格好をした時は全然似合わなかったのに、
どうして紳士はここまで完璧に似合っているのよ?
顔も体形もほとんど変わらないはずなのに・・・・・・)
そう、以前撫子は全く同じ服装とメイクをして姿見の前に立った事があるのだが、
その時はこんな妖精のような女の子は誕生しなかった。
可愛さを全面に押し出したメイクは撫子のキリッとした顔立ちになじまず、
春の妖精のようなワンピースは、シャキッとした撫子の体躯と溶け合う事はなく、
どこかぎこちない格好になってしまった。
その事を思うと、ほとんど同じ顔立ちと体形で、しかも男の子である紳士クンが、
ここまで完璧に可愛い女の子になってしまった事に、
何とも複雑な気持ちにならないではいられなかった。
そんな撫子の気持ちを露も知らない紳士クンは、姿見の前で自分の姿を、
撫子とは違う意味で複雑な気持ちで眺めていた。
(こ、これが、僕、なの?
完璧に、どこから見ても、女の子にしか見えない・・・・・・)
今日女装させられるであろう令太に付き合う為とはいえ、
ここまで完璧な女の子になると思っていなかった紳士クンは、
男らしさが冥王星よりもさらに遠くへ行ってしまったようなこの姿に、
ただただ茫然とするしかなかった。
そしてほのかに頬を赤らめ、傍らの撫子に尋ねる。
「す、凄く可愛い格好だけど、僕、変じゃ、ない?ちゃんと、似合ってる?」
そんな紳士クンの言葉と仕草と、
その他モロモロに対して色々ツッコミたい衝動に襲われた撫子は、
反射的にこう叫ばずにはいられなかった。
「お前は女子か!」




