16 男同士のぶつかり合い
紳士クンが令太をつれてやって来たのは、
紳士クンと令太が初めて出会った、校舎の資料室だった。
幸い(かどうかはわからないが)資料室には誰もおらず、
令太を乱暴に資料室の中に引き入れた紳士クンは、
そのまま資料室の扉の鍵をガチャっと閉めた。
それを見た令太は、精一杯の虚勢を張って紳士クンに言った。
「俺をこんな所に連れ込んで一体どうしようって言うんだよ?
まさか殴り合いの喧嘩でもしようってのか?」
それに対して紳士クンは、令太の正面に立って静かに言った。
「違うよ。僕はただ、令太クン(、、、、)と話がしたかっただけなんだ。
この学園に転校してきてから、令太クンは全然クラスになじめないみたいだし、
僕の事も何だか避けてるみたいだし」
すると令太はあざけるような笑みを浮かべ、
紳士クンから目をそらしてこう返す。
「ハンッ、どうして俺が、
こんなしょうもない学園のお嬢様達と仲良くしなきゃなんねぇんだよ?
それに男のクセに女の格好して女子校に通う奴とも、俺は仲良くなる気はねぇよ」
「なっ⁉」
その言葉に紳士クンはカッと顔が赤くなり、上ずるような声でこう言った。
「こ、これは、僕だって好きでこうしてる訳じゃないんだ!
それに令太クンだって僕と立場は同じじゃないか!
だからせめて事情が同じ者同士、
仲良くなれたらいいと思っているのに・・・・・・」
「余計なお世話だってんだよ。
俺は誰とも仲良くやる気はねぇ。
そのうちでっかい問題でも起こして、退学処分になってやる。
そしたらあの馬鹿姉貴のお遊びに付き合う必要はなくなるからな」
「そ、そんなのダメだよ!
そんなやり方で令お姉様に反抗するのは絶対間違ってる!」
「だからって何で女装して女子校に通い続けなきゃいけねぇんだよ⁉
お前は何で姉貴の言いなりになってんだ⁉
このまま女として生きて行くのかよ⁉」
「ち、違うよ!
僕はもっと男らしい男になるのが、人生の目標なんだ!」
「じゃあ全く真逆の事をやってるじゃねぇか!
男らしくなりてぇのに女子校に通って女らしさを磨いてどうすんだ!」
「う・・・・・・そ、それは、返す言葉がないんだけど・・・・・・
とにかく今はこんなだけど、将来僕は必ず立派なジェントルメンになるんだよ!」
「笑わせんな!周りに流されて自分が男である事すら言いだせないお前が、
立派なジェントルメンになれる訳がねぇだろ!」
「ぐっ・・・・・・」
令太の言葉にたじろぐ紳士クン。
目は赤く充血し、気を抜けば今にも涙がこぼれそうになる。
が、それでも令太から視線をそらす事はしなかった。
そんな紳士クンを見て、逆に令太の方がバツが悪そうに目をそらす。
そして頭を乱暴にかきむしりながら言った。
「お前の将来の目標はどうでもいいけどよ、もう俺に構うのはやめろよな。
俺は俺、お前はお前。それでいいだろ?」
「よくない!それじゃあ僕の気が済まないもの!」
「だああっ!しつけぇなぁもう!
それなら一体どすりゃお前の気が済むんだよ⁉」
今にも殴りかからん勢いで叫ぶ令太。
その剣幕に紳士クンは一瞬ひるんだが、ひとつ息をついてこう言った。
「今度のお休みに、僕と、何処かにお出かけしよう!」
「は?」




