22 右手の感触
そしてその様子を目の当たりにして、
華子が元の状態に戻った事を理解した紳士クンは、
慌てて華子の元に駆け寄り、倒れ込んだ華子の上半身を抱きかかえて声をかけた。
「華子さん!大丈夫⁉」
そう叫びながら二、三度揺さぶると、
「ん・・・・・・」
と声をもらし、華子は意識を取り戻した。
「あ、あれ?私、どうしちゃったんですか?」
辺りをキョロキョロ見回しながら呟く華子に、
紳士クンは目を泳がせながら答える。
「え、え~と、儀式の途中で、突然意識を失ったんだよ」
すると華子はガバッと起き上がり、紳士クンにグイッと顔を近づけて言った。
「と、いう事は、呼び出した霊が私に取りついたんでしょうか⁉」
「ど、ど、どうかな?
ずっと華子さんは、ここで意識を失ったままだったから・・・・・・」
まさか幽霊に取りつかれた華子が紳士クンに抱きついたり、
紳士クンのアレ(、、)を握ったなどとはギロチンにかけられても言えない紳士クンは、
そう返すのが精一杯だった。
しかし華子は興奮した口調で続けた。
「きっとそうです!短い時間とはいえ、霊が私に取りついたんですよ!
それが証拠に私の右手に、何か不思議な感触が残っていますから!」
「ええっ⁉そそそそれはよくないよ!早く洗って清めないと!」
「そんな!洗うなんてとんでもない!
これはきっと、霊が私の体に取りついた証ですから!」
「いや、でも、う~ん・・・・・・」
右手を力強く握りしめる華子に、
紳士クンはそれ以上何も言う事はできなかった。
そして心の中で、華子の右手を穢してしまった事を何度も謝った。
ちなみにそんな紳士クン達の様子を、
聖母様の影に隠れて愁衣が覗いていたが、
紳士クンがそれに気づく事はなかった。
こうしてこの日のオカルト研究会の活動は無事(?)に終わったが、
紳士クンの不本意な日々は、まだまだ続くのであった。
頑張れ紳士クン。
負けるな紳士クン。




