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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅲ  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンと足のない乙女
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22 右手の感触

そしてその様子を()の当たりにして、

華子が元の状態に戻った事を理解した紳士クンは、

慌てて華子の元に駆け寄り、倒れ込んだ華子の上半身を抱きかかえて声をかけた。

 「華子さん!大丈夫⁉」

 そう叫びながら二、三度揺さぶると、

「ん・・・・・・」

と声をもらし、華子は意識を取り戻した。

 「あ、あれ?私、どうしちゃったんですか?」

 辺りをキョロキョロ見回しながら呟く華子に、

紳士クンは目を泳がせながら答える。

 「え、え~と、儀式の途中で、突然意識を失ったんだよ」

 すると華子はガバッと起き上がり、紳士クンにグイッと顔を近づけて言った。

 「と、いう事は、呼び出した霊が私に取りついたんでしょうか⁉」

 「ど、ど、どうかな?

ずっと華子さんは、ここで意識を失ったままだったから・・・・・・」

 まさか幽霊に取りつかれた華子が紳士クンに抱きついたり、

紳士クンのアレ(、、)を握ったなどとはギロチンにかけられても言えない紳士クンは、

そう返すのが精一杯だった。

しかし華子は興奮した口調で続けた。

 「きっとそうです!短い時間とはいえ、霊が私に取りついたんですよ!

それが証拠に私の右手に、何か不思議な感触が残っていますから!」

 「ええっ⁉そそそそれはよくないよ!早く洗って清めないと!」

 「そんな!洗うなんてとんでもない!

これはきっと、霊が私の体に取りついた証ですから!」

 「いや、でも、う~ん・・・・・・」

 右手を力強く握りしめる華子に、

紳士クンはそれ以上何も言う事はできなかった。

そして心の中で、華子の右手を(けが)してしまった事を何度も謝った。

 ちなみにそんな紳士クン達の様子を、

聖母様の影に隠れて愁衣が覗いていたが、

紳士クンがそれに気づく事はなかった。

 こうしてこの日のオカルト研究会の活動は無事(?)に終わったが、

紳士クンの不本意な日々は、まだまだ続くのであった。

 頑張れ紳士クン。

負けるな紳士クン。


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