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紳士クンの、割と不本意な日々Ⅲ  作者: 椎家 友妻
第五話 紳士クンと足のない乙女
108/110

20 幽霊のスキンシップ

 「うわぁっ⁉ななな何するんですか⁉」

 顔を真っ赤にしながら慌てふためく紳士クン。

いつも身近に居る華子とはいえ、

こんなにベッタリ抱きつかれるのは初めてだったので、

胸の鼓動がみるみるうちに速くなる。

しかも細身の華子の胸元の果実は意外と豊かに実っており、

その柔らかな感触が、紳士クンの胸板に惜しげもなく押しつけられた。

そしてひたすらあわあわする紳士クンに、

愁衣は無邪気な笑みを浮かべながら言った。

 「スキンシップよスキンシップ。

ずっと幽霊をやっていると人肌が恋しくなるのよ。

幽霊は壁とかすり抜けられるから便利と言えば便利だけど、

モノに触る事ができないから、

こうして人の温もりを感じる事ができないのよ」

 そう言いながら紳士クンのほてった頬に、

見た目よりずっと柔らかで艶のある頬をスリつける愁衣。

それと同時に華子の絹のような髪から、

ほのかに漂う甘い香りが紳士クンの鼻をくすぐり、

紳士クンの方が魂が抜け出そうになっていた。

 (こ、こ、このままじゃダメだ!)

 そう思った紳士クンはもうろうとする意識の中、

首の皮一枚つながった理性を奮い立たせ、

両手で愁衣を押しやって声を荒げた。

 「だ、ダメだよ!他人の体でこんな事しちゃいけないよ!」

 しかし愁衣は何ら悪びれる素振りも見せずにこう返す。

 「別にいいじゃないの、これくらいのスキンシップ。どうせ女同士(、、、)なんだし」

 「う・・・・・・」



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