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12 女の子、浮いてる
それはともかく、紳士クンが処女ではないという事実を
(多少の誤解を含むにしても)受け入れた華子は大きなため息をつき、
気を取り直した様子で言った。
「では、仕方ありません。処女の生き血は私のものを使う事にします」
そして華子は自分の右手の親指の先を針でプツッと刺し、
そこからにじみ出した血を杯の水に数滴垂らした。
その様子を背後で見ていた紳士クンは、
本当にこれで幽霊を呼び出す事ができるのかなと思いながら、
何の気なしに教会の高い天井を見上げた。
と、その時だった。
(ん?)
と、紳士クンは思った。
一体何があったのかと言うと、紳士クンが見上げた視線の先に、
一人の女の子が浮いていた。




