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1 草原の紳士クン
春の温かな日差しが優しく降り注いでいた。
ここは深い緑の葉に彩られた、名も知らない木々が生い茂る森。
その中を一筋の川が通り、耳に心地よいせせらぎが聞こえる。
そんな河原に一人腰をおろし、
この物語の主人公である蓋垣紳士クンは、
自然のめぐみに身を浸していた。
「う~ん、いい気持ち」
両腕を一杯にのばし、その場にゴロンと寝ころぶ紳士クン。
草原の柔らかな感触が紳士クンを包み、
目の前にどこまでも広がる青空の中を、
美しく歌いながら踊るように飛ぶ鳥が一羽。
穏やかなそよ風が吹き、
紳士クンの白玉のような頬をなで、
前髪をそっと揺らす。
そんな紳士クンの傍らに、一人の少女が現れた。