ルフィーナと社会人
謎に覆われた空間に、綺麗な女性と1人。
1度は味わってみたいもの。
彼女は貴方に問い、また答えてくれる。
この世界には秩序がる、その上で自由が許される、だだその枠をはみ出すと、そこには何もなくて、壁だけが立ちはだかり、それはあらゆる方向へ逃げようとするとそこへまた壁ができる。結末は八方塞がりで、閉じこめられて身動きがとれなくなる。
だからと言って自分は足掻こうとするタイプじゃない、むしろそんな壁を避け、周りに溶け込んで目立つことを恐れるタイプだ。
きっとみんなで揃って道を外れたやつを指さす、そんな連中の1人でしかない。
「そんな自分に君は嫌気がさしたのかい?」
窓際の揺り椅子に座り、軽く揺れながら分厚い本をまた1枚めくり、こちらとは目も合わせないが、自分の心の底を問われる。
「あぁ。」
「考えることをやめればいいよ、マイナスな考えばかりでは偏屈になってしまうよ?」
この事実を知った上でどうして考えられずにいられるというのか。
「……どうすればいい?」
「本を読めばいいさ。」
即答だ。
だが自分も何故かは分からないが屁理屈に意地を張った。
「そんな夢物語、くだらないな。もっと勉学に励んで資格を取るのが主流だ。そいう本ならまだしも、いまはキャリアが大事で、自分のスキルを生かさないと上がれないんだよ、」
なんたって彼女の椅子が揺れ上がる時に見えた辞書のような本の題名が"livre demagie"(魔導書)だったからだ。現実逃避にも程度があるだろう。
すると揺り椅子を止め、彼女は本を閉じ初めて俺を見る。
「そうかい?私は、この本だからこそ学べることもあったけどね、」
やけに日が差して彼女の瞳の橙色が輝く。
「……ふぅんっ……例えば?」
少し呆気に取られてしまったが、取り乱さないように質問した。
「それは言えないよ、それはズルだ、読んで得ないと。」
なんと意地悪な。教えてくれるくらいいいだろうに。別にいいが。
「そうか。だが読む気にはならないな。」
「へぇー、そう言われて興味が湧かないの?」
「さっきも言っただろう。そんな夢物語に関心がないと。それを読んで得られた事を教えてくれなくても別にいいさ。」
「……そっか。」
彼女は再び片足で床を蹴り椅子を揺らすと、本を開き、その世界に入ってしまう。
なんで俺はここまで屁理屈なんだろう。本当は、自分を変えようと思っていたのに、こうしてまた逆戻りだ。
自分で投げてしまう……。
ダメだ、何かしら自分からはみ出して見ないと、後ろ指を刺されようが、でなければ、ここで踏み出さないと、もうずっとこのままな気がする。変わるんだ。
そう自分に決め、彼女を見る。
「貸してくれ、、読むよ。」
「無理しなくてもいいよ。趣味が合わないなら仕方がないでしょうに。」
「いいや、本心だ。」
「よし、なら貸そう。これで君の答えが決まるといいね。」
俺は問に正解した気がした。
※
彼女は席を立ち、俺にその本を手渡した。
外へ通ずる廊下を渡り、屋敷を出ると、夕日が沈みかけていて、軽く風が吹き肌を冷やす。
そういえば自分は何故ここへ来たのだろう。具合が悪くて会社を早退しその帰りの途中だった所から記憶がなかった。どうして屋敷に入り……。
はっとしてもう一度後ろを振り返ると、そこには屋敷らしいものはどこにも見当たらない。そしてわっと色んな雑音が響き始める。
なんたって駅のホームじゃあないか。
しばらく辺りを見渡し、混乱した。
彼女は何者だったのだろう。
だが信じては貰えないだろうが、夢ではない事が一つあって、手元にはその分厚い本が握られていた。
「livre de magie, Un livre pour vous changer」
livre/Luffina Kelwey
(魔導書、それは自分を変えるための書)
(著者/ルフィーナ・ケルウィー)
「銀髪の殺人鬼」に続いて、
私の中の世界の人物(主要人物)をまた1人、解き放とうと思います(笑)
まだ始まったばかりですが、これから頻頻にとはいきません、忘れられそうな投稿頻度で公開していこうと思います。ごめんなさい。
……リアルが忙しいので。(汗)
上記の作品も頑張って進めています。
そちらの作品も読んでいただけると嬉しいです。