第7話 最後通牒
西トラルティール軍は、エーベルム要塞に立てこもっていた。
「ニス・ミケランジェロめ!」
ウズドガルドは、悪態をついた。
キティルハルム王国・・・
そこは、古代エルフの魔女の使い魔だった従者の猫が興した国。
魔法、錬金術、科学・・・
全てが最先端をいっている。
正面きって勝てる国ではない。
「大体、あの女王補佐官とは何者だ?」
どうも、人猫は、獣と人の長所を持ち合わせているようだ。
「要人リスト」と書かれた本に目を通す。
「女王補佐官ティルス・エラル・・・
女王ニウを公私にわたって補佐する最重要人物。
女王の夫であり、宰相エラル家の次男。
現在弟一子ニウ・アニス・キティルハルム。」
書面には、こう書かれていた。
「それにしても忌々しい!」
それは、数日前のこと・・・
「またきたにゃ!」
使者として、ニスが現れた。
「何のようだ!」
「これ、読むにゃ。」
ぞんざいに言うと、一枚の紙を渡す。
「な・・・
なんだと!?」
紙を見た、ウズドガルドの頭に、血が一瞬にして上った。
そこには、「トラルティールを統合せよ。さもなくば貴領を封鎖する。」と書かれている。
「ぷくく・・・」
「な・・・
何がおかしい!」
「だって・・・
みんな、「経済封鎖」でお腹すかしてたにゃ。誰のせい?
あんたのせい。
で、それが解かれてみんなが満腹・・・
でも、あんただけひもじいまんまにゃ・・・
これで、あんたが文句を言えば、へたすりゃ世界中にタコ殴りにされるにゃ。
運が良くてもシカトされるにゃ・・・
ホント・・・
食い物の恨みは破壊神より怖いにゃ・・・」
ニスは、笑うのを耐えるのに全精力を注いでいる。
キティルハルムの民は、話を切り出すことを遮られることと、使者を侮辱されることを嫌う民だ。
「ぐ・・・!」
まったくもってその通りである。
「ま・・・
せいぜい兄上におしおきされるにゃ。
あ・・・
そうそう。
昔、あんたが殴った男の娘と、あちしの息子が「お礼参り」に行くかもしれないんでよろしくにゃ。」
アニスと、レアンのことだ。
言うだけ言うと、ニスは大爆笑しつつ帰って行った。
「クソ猫どもが!」
ウズドガルドは、悪態をついた。




