第6話 ウズドガルドへの布告
魔王デラルとの決戦の最中・・・
キティルハルム方面から、謎の火柱が立ち上った頃、勇者レイストことレイスト・ラムンセンは、意識を取り戻し、自らの体の中にデラルを押し込んだ弟ヴェイストを斬った。
これは、女王ニウが、大魔法をもってして王都に侵入した敵を殲滅したからであるのだが・・・
これにより、人類側の勝利となったが、被害は大きかった。
各国軍の被害も、相当なものだったが、
竜族は金竜王が戦死、
世界中の里のエルフ軍は、三分の二が戦死、
勇者の一行は、レイストの妻セリナを始めとして全滅。(二代目レイストであるレイスト・ティアムルの妻とは別人)
辛勝である。
「自分勝手な猫共に頼るから、こうなるんだ!」
ウズドガルドが、激怒した。
「あんな、獣に!うべっ!」
言い切る前に、トラルティアに殴られる。
「あ・・・兄上?」
「後ろを見ろ。
その「自分勝手な猫」が来ているぞ。」
「!!」
そこには、女王補佐官ティルスが控えていた。
「キティルハルム王国女王補佐官ティルス・エラルと申します。
女王の名代として参りました。」
「・・・女王補佐官?エラル家?」
トラルティアは、ティルスの名乗った肩書きと名代という言葉に、ひっかりを感じた。
そう・・・
ニス女王は、「本気で謝罪」を試みている。
「この野郎!」
ウズドガルドは、ティルスを殴り飛ばした。
「貴様らが、援軍を遣さなかったせいでな・・・!
被害が、想定以上に・・・!」
ティルスは、ウズドガルドを見上げた。
「本日のこと・・・
陛下にご報告します。
「私の用件」を聞かず、ご自分のお言葉を通そうとするあなた様のことを、陛下はともかく評議会の方々はどう思うか・・・」
非常に残念な、表情だ。
ティルスは、呪文を唱え叫ぶ。
「ウェイレート!」
彼の姿は、その場から掻き消えた。
次の瞬間、トラルティアはウズドガルドを殴り飛ばした。
「お前は、キティルハルムの女王の許婚を殴ったのだぞ!
それに、彼は来なかった理由を言おうとしたのに、言わせなかった!
現在、世界各国はデラルの被害で食糧難だ!それをかの国は、大量の食糧を十分の一以下の値で輸出し、援助を行っている!
女王はともかく、評議会の連中は多数可決で、全ての国に対しそれを差し止めるだろう!
キティルハルムの人猫は、女王を家長と仰ぐ者たちだ。
お前は、その直接の「配偶者」に手をあげた。
いうなれば、彼らにしてみれば「国の顔」に泥を塗られたということだ。恐らく数日後には決定の使者が来るだろうよ!」
「くッ・・・!」
ウズドガルドは、自室で目を覚ました。
「あの時の夢か・・・」
そのときだった。
枕元に、キティルハルムの評議員服を着た三毛猫系の女がいた。
「お初にお目にかかるにゃ。
キティルハルム王国評議員・・・
商工ギルドマスター・ニス・ミケランジェロにゃ。」
ニスは、ニヤリと笑った。
「化け猫」さながらに。