第5話 軍隊監修
ニス・ミケランジェロ
商工ギルドマスター。
珍しく、陶芸家。
謎の一団に、王都が襲撃された際に、ダイナマイト入りの「失敗作」をぶつけてあわや王都を「火の海」にしかけた危ない女。
ケンカをふっかけられたら、億倍にして返すヤツ。
アニスは、東トラルティールの軍責任者たちと協議しながら、改革案をまとめた。
「ふーむ・・・
東トラルティールは、貿易が盛んだからミスリルが多いですねえ。」
「うむ。
西ウズドガルドと違い、戦果を上げ・・・
勇者レイストのパーティを魔王軍に突入させる、原動力となった。
鉄より硬く、軽く、柔軟なこの金属は産業にもよい。」
トラルティールは、自慢気に語る。
「でも・・・
それでも「金属」です。
強く、統率力のある人が「全身鎧」をまとったら・・・
「最強」じゃないですか?」
そうして、騎士団の再編。
ティアムルを長とし、
神聖騎士七名、
黄金騎士、
白銀騎士、
青銅騎士、
鋼鉄騎士の五階級。
魔導師大隊の創設。
レイチェルを長とし、後方支援にあたる。
軍備は、着実に強化されつつあった。
加えて、もともとトラルティアが行ってきた交易による経済効果もあり、国力は高められていた。
「これでは、「弱いものいじめ」ですね・・・」
レアンはアニスに言った。
「ウズドガルド殿下は、本当に「強い」ならば、現状を理解し、こちらの用件を呑むわ。
でも「弱い」ならば・・・」
アニスは、笑顔で言う。
レアンは、その冷たさに底冷えした。
「逆ギレして、「侵略」してきますか。」
「ええ。」
すなわち、兵糧攻めして「攻めさせる」ということ。
後の「統一トラルティール」の騎士ライテスは、「「大日本帝国軍」も、「攻めさせられた」ため国力を消耗させられて滅び、直後に「日本国」が誕生した。」と語っている。
ただ、「大日本帝国」の場合、開戦解除のハードルは極めて高く、西トラルティールは極めて低かった。
「「貴領への併合は、遺憾であり、承服しがたいものであり、断固拒否するものである。」ウズドガルドの書面がこれか・・・」
トラルティアは、ためいきをついた。
「思えば、対デラルのための各種族との折衝は、あいつのためにボロボロになりかけたものが多い。貴国による救援の差し止めは国を襲った「人鼠」によるものではないか。」
「いいえ。あの方の中では、違います。」
アニスが首を横に振った。
「キティルハルムが、悪意をもって差し止めた・・・そうでなくてはいけないのです。」
「己の正義が、事実を真逆に変えるか・・・あってはならぬ。」
ニウ・キティルハルム
後の「ニウ一世」。
アニスの母親。