第1話 トラルティア王太子
東トラルティール州都トラルティア城・・・
城主トラルティア王太子は、部下たちがあげた決算の書類に目を通していた。
「戦争の傷痕が癒えたとはいえ・・・
食糧自給率が、まだ低いな。」
トラルティア王太子は、種族を問わない実力主義者。
獣人さえも、重用する。
「殿下。
やはり、キティルハルム王国に「経済封鎖」をくらったのはマズかったですね・・・」
騎士団長ティアムルが、声をかけた。
「ああ。
魔王デラルとの戦争中・・・
世界中の食糧生産率は、激減していた。
そこへ、飢え知らずのキティルハルムは、市場のわずか20%の値で流してくれた。
だが・・・」
そこへ、魔導士大隊隊長のレイチェルがお茶をもってきた。
「ここへきて、倍の値をふっかけました。」
事実上の「経済封鎖」だ。
「世界」に対してだ。
「キティルハルムの農業生産は、先進的だ。
技術が高すぎて、マネができん。
あのバカ者は、それがわかっていて「女王補佐官」を殴ったのか?」
トラルティアは、頭を抱えた。
「わかっておられません。
戦場でも、自ら先陣を切って・・・とまではいいですが・・・
兵を無駄に消耗しております。」
レイチェルは、胃薬を飲んだ。
「それで「猪王」か。」
そのときだった。
兵が飛び込んできた。
「殿下!
奇妙な人猫の子供二人が、領内を移動していると報が入りました!」
トラルティアは、ティアムルに目配せをした。
「見てまいります。」