第10話 戦争の終わり
トラルティアの剣が、ウズドガルドに向けられた。
勝負は決まったのだ・・・
「ウズドガルドよ・・・
嫌なものを押し付けるわけにもいくまい。
だが、私はお前が頼ってくるのを待っているぞ。」
言うと、トラルティアは、歩き出した。
「私は、未来に備えねばならん。
だが、お前はただ一人の弟だ。
・・・いつまでも待っているぞ。
そう・・・
何代でもだ!」
トラルティアは、この日をもって東トラルティールを自らの名を取って「トラルティア」と改名する。
トラルティア王国建国である。
更に、トラルティアは官僚を集めるため、選挙を実施。
宰相の選挙の当選発表は、キティルハルムから建国戦争の支援に派遣されていた、王太子ニウ・アニス・キティルハルムが行った。
政権誕生の祝いとして、キティルハルムの王宮御用達菓子職人からレアチーズケーキが、贈られてきた。
なんでも、
百年に一度にしか採れない小麦粉、
十年に一度にしか採れない卵、
二百年に一度にしか作れないチーズ、
五百年に一度にしか採れない砂糖を使用し、
それをキティルハルムのパティシエ界の「神童」といえる御用達職人ネル・ミケランジェロが作り上げた「超」レアチーズケーキだったのだという。
「こ・・・これを作るとは・・・姉ちゃん・・・」
レアンが絶句する。
「にゃーははは!
ついにつくったにゃ!
伝説の「超」レアチーズケーキを!
トラルティア陛下!
トラルティア国民の皆さん!
これは女王陛下とキティルハルム国民からの祝いの品にゃ!」
「レ・・・レアって・・・意味が違うような・・・」
レイチェルが、引きつっている。
そう。
ネルは、そういう女だ。
「っていうか・・・
ネルさん・・・
あなた・・・
商工キルドマスターの・・・」
「にゃ。
あちしは次女にゃ。
姉ちゃんが跡取りで、上の弟が彫刻家にゃ。
ついでに言うと、王太子殿下と評議員のローブは、ご先祖様の一人の服飾デザイナーの作にゃ。」
母親そっくりの、まだ十代後半の純白のコック服の少女が胸を張る。
「これで終わりじゃないにゃ!
至高のスイーツを完成させてやるにゃ!」
国家建国式典の会場では、あちこちで「美味い!」の声が合唱されている。
まるで、口から光を放ちそうである。
「王太子殿下。
レアン。
お仕事は終わったにゃ。
学校は「卒業扱い」にするので、「用があったらすぐに済ませて帰って来い。」との陛下のご命令にゃ。」




