またこのシチュエーション?
「あーマジで自分がヤダ…」
もう恥ずいを通り越して、悲しくなってきた。
そんな俺を必死で慰めてくれる智夏が更に悲しい。
「あたしだって悪いもん。
翔太のせいじゃないよ?」
…とは言ってくれるものの。
なんか納得できない。
「ホントに…ごめんな?智夏…」
「良いってば…」
「いや、俺が良くない。
もう俺のこと煮るなり焼くなりしてくれ!」
俺のおかしな発言に智夏がクスクスと笑う。
「じゃぁさ?一つお願いしても良い?」
「おう!なんでも聞く!」
なんか今の俺、忠犬みてぇ。
「………して?」
「え?」
「キスして…?」
ふぇ?
智夏が?
こんなこと言うなんて…ありえねぇ!
智夏が顔を真っ赤にしている。
俺の聞き間違いじゃないよな?
…なんか俺まで顔赤くなってきた…。
今まで見たことないくらい智夏が可愛い。
俺が智夏の頬に手を添えると目を閉じる。
…やべぇ、マジで可愛いんだけど…。
そして顔を近づける。
後、5センチ……だったのに。
「智夏いるー?」
勢いよく開かれた扉から顔を出したのはもちろん智夏の親友。
そんな俺達が真っ先に目に入ったのか。
「…もしかしてお邪魔だった?」
「うん、すげぇタイミング悪ぃ」
「ちょ、翔太!」
いや、マジでタイミング悪ぃ…。
智夏からこんなこと言ってくるなんて滅多にないんだぞ?
あーぁ…。
「で、どしたの?」
「いや、大河が呼んでたからさ。
ここにいるかなと思って呼びに来たの」
「そっか、ありがとう。
じゃぁちょっと行ってくるね?」
ぱたぱたと立ち上がって屋上を出る。
それを屋上から見送る。
屋上は見渡しがいいから空中廊下を通る智夏がよく見える。
「あ!」
「ん?どしたんだ?」
俺と一緒に智夏を見送ってると思ったら急に声を上げた。
「あっちの方向って…体育館だよね?」
「そーだけど…、大河がいるんじゃないのか?」
「違うの…智夏、勘違いしてる!!
大河は教室にいるの!」
「は!?なんで最初にいわねぇんだよ!」
「だって普通、最初は教室いくじゃん!」
ん、まぁ大河がいなかったら気づくだろ。
「やばいかも…」
「何がだ?」
「前に言わなかったっけ?
今、体育館不良が多いって…。
前に大河と言ったときはいなかったみたいだから良いけど…。
今日は智夏一人。
また…このシチュエーションかよ…。
そう考えながらも、さっきまで脱力していた体を一気に起こして屋上を飛び出していた。