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そして結末。

あれから俺は、迷いに迷ったあげく


玄関でこっそりと靴紐を結んでいた。


外に出る準備は万全―――と言ったいでたちだ。


「よし…」


結び終わった俺は、親にばれないように玄関の扉を開けた。


三十分ほど前から部屋にこもると宣言した俺を


親は少しも疑っていない様子だった。


逆にここまで疑われないと罪悪感もあるけど。


今わとりあえず後回し。


俺も俺なりに、それもけじめつけたんだから


智夏が俺を呼び出したっておかしくはない。


そんな理由をつけながら、俺は学校へと向かった。






―――――――――――――――――――――――――






ちょうど徒歩二十分。


俺の家から学校までにかかる時間だ。


あたりはすっかり暗くなっているけど、今日は満月のせいか明るい。


不気味になるはずの学校を強く照らしている。


「智夏?」


その月と重なるようにして、智夏は門の前に立っていた。


時間は五分前だからちょうどいいころだろう。


「翔太…」


消え入りそうな智夏の声。


わずかだけど俺の名前を呼んだ。


その声にまだドキッとする俺は末期だ。


いやいや、今はそんなこと言ってる場合じゃないな。


俺のがぐらっと来ちゃうまえに帰らないと…。


「えっと…どうしても翔太と…話がしたくて…」


「大河のこと?」


「…知ってるの?」


俺は無理にでも智夏に冷たく対応する。


どうやら智夏は俺が智夏と大河のことを知らないと思っていたらしい。


そんなわけねぇのに。


「でも、今日話じゃなくて…翔太に聞きたいことがあって…」


「何?」


「何であたしのこと避けるの?」


「…は?」


避けてる?俺が?


「そりゃそうだろ、だって俺はもう智夏の彼氏じゃねぇんだし。


お前だって気まずいだろ?


それに新しい彼氏に悪いし」


「だから!」


智夏が急に声を荒立てる。


「なんでそんなことになっちゃったの…?」


「…そんなこと…聞きてぇのは俺の方だっての…」


俺だってなんで俺じゃない奴と付き合ったのか聞きてぇよ。


聞いても諦められる自身はねぇけど。


「あたしのこと…嫌いになったの…?」


「別に…、てかお前はどうな訳?俺のこと嫌い?」


わざと答えられないような質問をする。


この際ならはっきりと言ってくれたほうが俺としてはありがたい。


「………だよ…?」


「聞こえない」


「あたしは…好き、だよ?翔太のこと…」


「じゃぁなんで?」


「え?」


「じゃぁなんで大河と付き合ってんの?」


智夏は少しだけ困った顔をする。


「えっと…もしかして体育館のこと?」


「そうだよ…」


少し遅れて俺が答えた途端、智夏の顔が少しだけ緩んだ気がする。


俺の気のせいか?


「後…さっきの質問なんだけど…あたしのこと…好き?」


…反則だろ。


そんな聞き方されたら本音言うしかねぇじゃん。


もちろん俺の答えは…


「好きだけど?」


開き直ったように答える。


当たり前のようにおとずれた沈黙。


でも、その沈黙もわずか数秒で打ち破られた。


なぜなら。


「翔太ぁ〜…」


「うわぁ!」


突然智夏が俺の元へ駆け出し、抱きついてきたからだ。


たちまち俺の顔は赤くなる。


夜だからよかったけどたぶん耳まで真っ赤だろう。


「よかったぁ…」


智夏が俺のTシャツに顔をうずめる。


俺は抱きしめ返したかったけど、何とかぎりぎりのところで踏みとどまる。


いやいや…何も分からないまま抱きつかれても困るんですけど…。


俺の熱くなった体温がだんだん平熱に戻ってきた頃、ようやく智夏が顔を上げた。


「えへへ…ごめんね」


と、小さく舌をだして笑う。


泣いてたのか心なしか目が赤い。


「あのさぁ…」


「何?」


「俺、全く状況が読めないんですけど?」






―――――――――――――――――――――――――





「あぁ〜、かっこわりぃ!」


俺は久しぶりに屋上で大声で叫んだ。


俺と智夏以外に誰も人はいなかったし、てかいても別にどうでもよかった。


「そんなことないって!」


智夏はさっきから俺にそういうけど俺はどうしても納得できない。


だって俺は人生最大の勘違いをしていたのだから。


そう…智夏と大河は付き合ってなかったんだ。


あの体育館では…



「俺さ好きな奴いるんだけど…」


「知ってるよ。美咲でしょ?」


「っ!?なんで知ってんの!!」


「顔見てればわかるって。


手伝って欲しいんでしょ?」


「いやぁ、そうなんだけど…」


「まだなんかあるの?」


「実は…もう今日一緒に帰る約束してんだ…」


「え!?本当に?


よくOKしてくれたね。美咲、男子に興味ないのに」


「えっと…それでですねぇ…一つだけ条件がありまして」


「あたしが一緒ならいい…とか?」


「大正解!」


「大正解!じゃないわよ!知ってるでしょ!?


あたしがいつも翔太と一緒に帰ってること!」


「当たり前だろ!だからこうして折り入って頼んでるんだ!」


「そんなこと言われても…」


「頼む!俺の付き合ってくれ!」


「う〜ん…しょうがないなぁ〜。いいよ!付き合ったげる!」



ってな感じだったらしい。


だから、要するに全部俺の勘違い。


あ〜かっこわりぃ!


それもあげく智夏まで泣かせて…。



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