別れを告げに。
次の日。
まぁ、当然俺のテンションはもちろん最悪なわけで。
これまでないくらいブルーなわけで。
一回は休むことを考えたわけで。
…でも、そんなプチ・大それた事を俺が出来るはずもなく。
部活の朝錬もあるし。
しかたなく早起きして
取りあえずは登校した俺。
それに今日は女子テニス部は朝錬がない日。
ブルーな気分を吹き飛ばすのには最適だった。
パコーン… スコーン…
テニスボールのおなじみの音。
…もう俺にはテニスだけだ…。
こういうこと言う柄じゃないけど今はこんなことを言えるほどマジ。
とりあえず朝錬が終わったらあいつらと逢わなくちゃ行けないわけだし
それまでにはテンション上げとかなきゃさすがにまずいよなぁ。
テニスのボールと頭の中にあるもやもやについてのみ集中する。
…つもりだったんだけど。
「翔太っ!!!」
後ろから聞こえてきた聞きなれた声。
そして、
今最も聞きたくなかった声。
なくなりかけてたもやもやが一気に逆戻りしてくる。
こんなにも、簡単に決意が壊れるなんて。
俺もまだまだだなぁ…。
ラケットを振る手を止めた俺のところに
ゆっくりと智夏が向ってくる。
俺はまだ振り向いてない。
今なら…まだ大丈夫だよな?
今ならまだ…すっぱり別れてやれるよな?
顔見たらきっと…アウトだな。
「智夏」
「?どうしたの?」
「おめでとう」
「え?」
智夏のおどろいたような声。
きっと今日の朝、早く来て俺に言うつもりだったんだろう。
先にいえて本当によかったと思う。
面と向って言われたらやばいし…。
なにより、俺はまだ好きだし。
まだ嫌われたくないというのはやっぱり男らしくないだろうか?
でも、そうなこともうどうでも良い。
今は開放感でいっぱいだ…。
こんなことを言ってのけた自分をほめてやりたいぐらいだ。
「仲良く…やれよ?」
「え?」
それだけ言った後、俺の側に転がっていたボールを拾い上げる。
もう話さなくて良いように…ありったけの力を込めてサーブを打つ。
「翔太?」
…出来れば、もう名前もよんで欲しくないんだけど。
それは俺のわがままだろう。
だからせめて、
「危ないからコートから出てろ」
今だけは俺から離れて欲しい。
せっかくここまでやってきたのに今にもそれが全部壊れそうなんだ。
これ以上ここに智夏がいたら…。
これで、全部終わったんだよな。
じゃぁな。俺の初恋。