帰り道。
猛ダッシュしたあと来たのは、
…やっぱり屋上だった。
できれば、来たくないような気もしたけど
俺にはここしかなかった。
まぁ、さっきみたいにもう智夏が来る心配することもねぇし
一番安全かもな、ここは…。
その後の俺はずっと上の空だった。
今日のこの後の授業はたまたま自習だったし
先生に目を付けられる心配はなかった。
そして俺は、いつの間にか眠ってしまっていた。
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「んん…」
目が覚めるとあたりはもう夕日のオレンジ色でいっぱいだった。
部活をやっている奴もそろそろ終盤という所だ。
とっさにテニスコートに目を移す。
これまた今日は顧問が出張の為、
男子テニス部は休養。
でも、女子テニス部は活動中。
そこの中に智夏の姿は…ない。
もしかしてなにかあったとか…?
いや、もう俺の心配することじゃないけど。
もしかしたら大河と一緒に帰ったのかもしれない。
でも、それならよかった。
あいつ等が一緒にいるところなんて
絶対に見たらまた落ち込むし。
なんて考えてたのもつかの間。
「あれは…」
それは校門の前。
智夏が一人立っていた。
まだ、帰ってなかったのか…。
前の俺達は毎日登下校だけは一緒だった。
もしかして俺を待ってる…とか?
しかし、そんな甘い考えは一瞬にして吹き飛んだ。
あれは…大河だ。
大河が智夏のもとに走っていく。
そこで二人でなにやら話している。
後ろ向きになってしまった智夏の表情が見えない。
大河の表情はいたって楽しそうだ。
…そりゃそうだよな。
出来立てのカップルだ。
楽しそうにきまってる。
それから数分後。
二人は校門を出て帰っていく。
それは大河の家とは違う方向。
…紛れもなく智夏の家の方角だった。