告白。
吹き抜けの中央廊下。
部活で走ることは多いけどこんなに全力で走ったのは久しぶりだった。
体育館は屋上から一番遠い居場所。
…なんであんな所にいたんだ、俺!
不良の中で一番危ないのは俺と同じ部のテニス部員。
特に先輩。
俺は昔からテニスやってて二年のときからレギュラーだったし
なにより智夏はモテる。
だから危ない。
影で智夏を狙ってる奴なんて大勢いる。
大河がいるからその辺はある程度なら大丈夫だと思うけど…。
てか、はっきり言って大河も危ない。
体育館で二人っきりっておい!
絶対告るだろっ。
悪い考えはどんどん広がっていく。
…急がねぇと!!
―――――――――――――――――――――――――
「智夏っ!!」
体育館に着くなり俺は智夏の名前を叫ぶ。
どうやらフロアにはいないみたいだ。
奥に入って倉庫の扉に手をかける。
がらっと音をたてた扉のすぐ側に智夏はいた。
…大河と一緒に。
「翔太!」
二人とも突然入ってきた俺に目を向ける。
心なしか…頬が赤い。
これは…一番まずいシーンに入ってきちまったのか…?
「えっと…、お取り込み中?」
「お取り込み中」
それとなく聞いてみた俺の質問に即答する大河。
「俺、まだ智夏に返事聞いてないんだけど?」
あぁ…やっぱりでしたか…。
てか俺、もしかして修羅場?
「で、良い?それともダメ?」
「んん〜……」
迷ってる様子の智夏。
告白の返事…。
大河に良いって言ったら俺達は分かれる…ってことだよな?
なんとなく人事のようになる。
あまりの展開についていけてない。
そして、智夏が口を開く。
「んん〜…、しょうがないな。良いよ付き合ったげる」
「!?マジで!?よっしゃっ!!」
智夏の返事…。
つまり…この二人は付き合うって事か?
じゃぁ俺は?
これを見せ付けられたらわざわざ「別れよう」なんていう必要ねぇんだろーけど。
俺を見てわずかに微笑む智夏。
派手に喜ぶ大河。
何も出来ずにただ足っているだけの場違いな俺。
…俺、もうここにいる意味…ねぇよな。
クルっと二人に背を向ける。
そしてそのまま…。
…ひたすら扉に向ってダッシュ。
あぁ〜…ダセェ。
「翔太っ!!」
後で智夏の声が聞こえるけどそんなもの今の俺には関係ない。
多少の名残惜しさはあるけど
ここで振り向くほど俺は往生際は悪くない。
それに…例えフラれたとしてもこんなダセェ俺、智夏に見せたくない。
今の俺はただそれだけだった。