本当のこと。
「っ!!痛ってぇ…」
「ご、ごめん。大丈夫?」
保健室。
ケガだらけの俺を智夏が手当てしてくれている。
あの後、少ししてから先生達が俺たちのケンカを止めに来た。
でも、それはもうすでに遅く。
俺もボロボロでキズだらけだし、相手も俺ほどではないけど相当ボロボロだった。
先生達は智夏の話を聞いてたみたいで、俺は何とか説教だけで済んだ。
でも不運なことに今日は保健室の先生は不在。
そこで智夏が手当てだけでも、とかってでてくれた。
でも、
「やっぱ痛ぇ…」
「ちょっと待って…もうちょっと…」
手当てをしてくれてるのはいいんだけど体中ボロボロで痛いし
智夏は案外…不器用だったりするみたいだ。
やっとの思いで手当てを終えた智夏がなみだ目で俺の服のすそをキュっと掴む。
「ごめんね…、時間かかっちゃって」
「別にもう大丈夫って言ってるだろ?
このくらい痛くも何とも…」
「…嘘」
智夏が俺の服を掴む力を強くする。
「いっ…!つぅ…」
その手が傷口に少し触れた。
「すっごく…痛そうだったもん」
「…大丈夫だって」
智夏には見透かされてるみたいだけど素直に痛いと言う気は無い。
いや…ケンカなれしてない俺とってはそりゃもう激痛だけど。
「ごめん…あたしのせいだ」
「んなことねぇって。
俺だって本当は智夏と一緒にすぐ逃げようと思えば逃げられたんだし。
智夏のせいじゃない」
「でも……。
あたし、最近翔太のこと傷つけてばっかりなんだもん」
「傷ついてねぇ…わけじゃないけど、
どっちも俺のせいなんだし。
智夏のせいじゃない。
それに、ケガぐらいすぐ直るって!!
つか、そっこーで直す!」
「うん…」
俺がどんなに大丈夫だって言っても納得できない様子の智夏。
俺にとっては智夏に心配かけるくらいなら
ケガだってなんだって平気なつもりだ。
うつむいたまま口を開かない智夏を覗き込むと、
「だから…泣くなって」
必死にこらえていたであろう涙を俺はそっとぬぐう。
「だってぇ~…」
智夏がかすれた声を出す。
あぁーもう!!
こいつは何にもわかってねぇ…。
「俺はお前に泣かれるのが1番困んの!!」
「…なんで?」
「なんでってあのなぁ…」
智夏の上目遣いにやられて思わず目を反らしながら頭をかく。
「智夏の泣き顔…可愛過ぎ」
俺は言い終わらないうちに智夏を抱きしめた。
出来れば聞こえてないといいなぁ…なんて思いながら。
なんだかその時の智夏が可愛くてしようがなかった。
「翔太…好きだよ」
顔は見えないけど肩越しに聞こえる声。
こいつは全く…どこまで俺を押さえられなくする気なんだよ。
智夏を抱きしめていた手をゆっくりとほどく。
「翔太?」
「…さっきの続き」
そう言って俺は智夏の腰に手を回してぐっと引き寄せる。
返事を聞かないうちに、俺は智夏にキスを落とす。
目を開けると目の前に顔を真っ赤にして恥ずかしがっている智夏がいた。
今も感じてるこの激痛も。
智夏を失う怖さも。
今は全部忘れて。
智夏をただ、抱きしめていたい。
―――――――――――――――――――――――――
「俺と、付き合ってください!!」
「ごめんね、あたし彼氏いるから♪」
何故だか成り行きで大河の告白に付き合うことになってしまった俺。
と、いうより智夏と二人で向かいの教室で見てるだけだけど。
そしてその告白の相手は…。
「なんで林なんだよ…」
そう、大河の好きな相手は智夏の親友の林。
なんでも一目ぼれしたらしい。
分かる、確かに分かる。
林は結構モテるし、男子連中にも人気だ。
だったらなんで智夏と仲良かったんだ?
「あたしと大河は大河が転校してきたときから席も隣だったし。
案内とか教科書見せたりするのもあたしの役目だったから」
ニコニコと二人を眺めながら答える。
「でも実里はダメだよね~。
年上の彼氏いるし、もうすぐ一年目らしいし」
そうか…どうりで大河がバッサリ切られてる訳だ。
すっかり飽きた俺は教室のベランダに座り込む。
それにしても一年目かぁ…。
すげぇな、それ。
「どしたの?」
座り込んだ俺に目線を合わせて隣に座り込む智夏。
「俺たちって付き合い始めてやっと半年だよな?」
「そ、そーだけど…、どしたの?イキナリ…」
誰にも見られない場所。
俺たちしかいない状況。
絶好のチャンスだろ、これは。
俺はそっと短く智夏にキスをした。
「なっ…///」
「俺も一年たってもお前のこと好きな自信あるから」
すでに真っ赤になってた智夏が更に顔を赤くする。
嘘なんて言わねぇ。
どこまでも続いていけ。
俺の初恋。